人的補償の一岡がプロ初勝利 古巣・原巨人に強烈恩返し

[ 2014年4月28日 05:30 ]

<広・巨>お立ち台でエルドレッド(左)とポーズをとる一岡

セ・リーグ 広島3-0巨人

(4月27日 マツダ)
 古巣に恩返しの勝利だ!首位・広島は27日、巨人との首位攻防戦第3ラウンドで、0―0の延長11回にブラッド・エルドレッド内野手(33)が8号サヨナラ3ランを放った。チーム月間3本の延長戦サヨナラ弾はプロ野球史上初の快挙。3番手として11回を3者凡退に抑えた一岡竜司投手(23)がプロ初勝利を挙げた。今季は13試合に登板し防御率0・00。FA移籍した大竹寛投手(30)の人的補償で加入した右腕が快進撃の原動力となっている。

 今季最多3万2041人で埋まったマツダスタジアムは大興奮に包まれた。延長11回無死一、三塁、エルドレッドの打球が左翼席に突き刺さる。この直前、ベンチ裏でアイシングをしていた一岡は先発の前田健に呼ばれ、サヨナラの瞬間を見届けた。プロ初勝利。アイシングをしたまま歓喜の輪に飛び込んだ。

 「マエケンさんが完璧な投球をしていたのに、自分がもらっていいのかな」と照れ笑い。エルドレッドとともに上がったお立ち台では「カープに来て、ちかっぱ良かっちゃけど!」と故郷の福岡弁で喜びを表現した。完全に広島の一員となった一岡の姿があった。

 0―0の延長11回から登板。25日も1回を無失点に抑えており、巨人相手にはこれが4試合目だった。「巨人には特別な思いがある。おととい(25日)までは力みがあったが、きょうは自分の仕事に集中しリラックスして投げられた」。先頭の松本哲を三ゴロに仕留めると、最速149キロの直球を武器にアンダーソン、村田には力勝負を挑んで3者凡退。その裏の劇弾を呼び込み「少しずつ成長しているところを見せられてよかった」と古巣への思いを語った。

 11年のドラフト3位で巨人に入団。素質は高く評価されていたが、層の厚い投手陣の中では2年間で通算13試合の登板に終わっていた。そんな中で突然、訪れた野球人生の転機。昨年12月、大竹のFA移籍に伴い、人的補償で広島へ移籍した。もともと、人見知りで引っ込み思案な性格だったが、その1カ月前にプエルトリコでのウインターリーグに武者修行。ハングリー精神あふれる異国の選手と一緒にプレーした。自分をアピールしないと、居場所を失ってしまう。「プエルトリコでの経験が生きている」と一岡。新天地でも積極的に話しかけ、殻を破ると同時に才能が開花した。

 今季初めて開幕1軍入りを果たすと、ここまで13イニングを投げて防御率は0・00。セットアッパーの地位を築いた。一岡が感謝を述べたのは古巣に対してだけではない。「専門学校やアルバイト先にも感謝したい」。福岡の専門学校「沖データコンピュータ教育学院」出身で、当時、ピザ店でアルバイトしていたという異色の経歴の持ち主が、大きな1勝をつかんだ。

 巨人との3連戦を勝ち越したチームは2位・阪神とのゲーム差を2に広げた。延長戦は開幕4連勝となり、これは5連勝した91年以来、球団23年ぶりとなる。その91年は広島が最後にリーグ優勝した年で、Vへの吉兆。一岡は言った。「一試合一試合死ぬ気で投げたい」。鯉の季節を前に、その勢いは増すばかりだ。

 ◆一岡 竜司(いちおか・りゅうじ)1991年(平3)1月11日生まれ、福岡県出身23歳。藤蔭で甲子園出場なし。沖データコンピュータ教育学院ではJR九州の補強選手として11年都市対抗出場。同年ドラフト3位で巨人入団。2年間で13試合に登板し昨オフ大竹のFA人的補償で広島移籍。1メートル79、82キロ。右投げ右打ち。

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