「統一球変わっていない」はウソだった 加藤Cの責任問題に発展も

[ 2013年6月12日 06:00 ]

日本野球機構との事務折衝を終え、記者の質問に答える日本プロ野球選手会の楽天・嶋基宏会長(左)

 統一球は変わっていた――。労組・日本プロ野球選手会(嶋基宏会長=楽天捕手)と日本野球機構(NPB)による事務折衝が11日、仙台市内で行われ、飛距離を抑えることなどを目的に11年から導入していた統一球を今季から変更していたとNPB側が認めた。12球団にも伝えられていなかった事実で、今後は統一球導入を決めた加藤良三コミッショナー(71)らの責任問題に発展する可能性もある。隠されてきた真実は、球界に大きな衝撃を与えた。

 選手会から統一球について追及を受けたNPB側の回答は驚くべきものだった。昨年から「微調整」を行っていた。それが答えだった。

 「昨年は(統一球の反発係数で)下限を下回るケースが多かった。昨年の夏に(製作する)ミズノ社に微調整をお願いした」。NPBの下田邦夫事務局長の説明によれば、昨年まで統一球に関して年5、6回の抜き打ちテストを行ってきた。統一球の反発係数の基準値は上限0・4374、下限が0・4134。それが0・408程度と下限を下回る球が一定数出ていた。基準値以下の統一球が使用されていた。

 現場だけでなくファンからも「今年のボールは飛ぶ」との意見は多かったが、この事実は嶋会長から「プレーしていて明らかに違う。本塁打数の増加や投手の防御率を見ても明らか」と指摘され、初めて公表された。ミズノ社に調整を依頼したことは加藤良三コミッショナーらNPB事務局の数人しか把握しておらず、12球団による実行委員会でも報告されていない。

 今季の公式戦で使用する統一球も4月と6月に行ったテストでは、まだ一部に下限を下回るケースもあったが、ほぼ基準値内に収まっているという。「(選手会から)試合が面白くないという問題提起があった。反発係数の基準値を下回ることは問題。在庫をスムーズに消化するため、去年のボールは紅白戦、オープン戦でなくした」と下田事務局長。つまり、開幕以降は「微調整」を施した球に変わった。

 NPBでは選手会に第三者機関の調査結果も提示。それによれば昨年までの統一球は当初NPBが想定していた統一球以前の公式球より飛距離の1メートル減をはるかに下回る3メートル減だった。それを当初の想定通り1メートル減の反発係数に戻したのが、今年の使用球だという。

 NPB側は「バットの改良」「打者の適応」などを本塁打数増の理由としてきた。加藤コミッショナーも「何も変えていない」と公言してきたが、ミズノ社に対して、統一球に関する問い合わせには「全く変わっていない」と答えるように指示していたという。嶋会長は「昨年までの統一球を基準にインセンティブ契約を結んだ選手もいる。労働条件にかかわる」と事実の解明を求め、今後はNPBが事実を公表してこなかったことが問題として浮上する。真実は明らかになった。選手会は7月に行う選手会総会でも統一球問題について議題とする構え。この席で加藤コミッショナーの責任問題を追及する可能性も出てきた。

 ◆統一球 日本野球機構(NPB)が公平な競技環境づくりや国際大会への対応のために2011年から導入した。ミズノ社製で、中心のコルク芯を覆うゴム材を低反発素材に変更。縫い目も幅が1ミリ広く、高さが0.2ミリ低くなった。反発係数を低く抑えることで、ミズノ社の実験では球速144キロ、スイング速度126キロ、飛び出し角度27度で打ち返した場合、従来の球よりも飛距離が約1メートル縮まるとしていた。

 ▼オリックス・森脇監督 もう言ってもいい話でしょう。今年のボールは明らかに飛距離が違う。配球で間違いがあると、取り返しがつかなくなる。

 ▼日本プロ野球選手会・石渡進介弁護士 飛ぶ、飛ばないということを議論しているのではない。変わるなら変わると言ってくれないと困る。出来高とか投手の攻め方とかも変わってくる。何でそうするのか、ファンとコミュニケーションするべきだ。

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