亀井「やってやりますよ!」 統一球を逆方向へ意地の一発

[ 2012年5月4日 06:00 ]

<巨・広>8回2死、勝ち越し本塁打を放つ巨人・亀井

セ・リーグ 巨人4-3広島

(5月3日 東京D)
 見苦しい男は1日で返上だ。巨人・亀井義行内野手(29)が3日の広島戦で同点の8回、今季1号となる決勝の左中間ソロを放った。亀井は連勝が4で止まった前日の同カードで緩慢プレー。原辰徳監督(53)から「見苦しい」と酷評された。反骨心をむき出しにした一撃。指揮官を見返したい思いが値千金のアーチを描いた。

 珍しく感情をむき出しにしていた。試合開始直前の一塁ベンチ。亀井は「やってやりますよ!」と顔を赤くして、ぶっきらぼうに言い放った。同点の8回、左中間席最前列に叩き込んだ決勝の1号ソロ。飛ばない統一球を逆方向に放り込んだ。屈辱を力に変えた打球は最後にひと伸びした。

 「言葉では言い表せないような悔しさがあった。きょうは何とかしようという気持ちがたまっていたので、それが何とか表せたのでよかったです」。亀井の心に火を付けたのは原監督の辛らつな言葉だった。左翼で今季初めて先発出場した前日。1点を先制され、なおも4回2死二塁。白浜の左前打を処理したが、緩慢な守備で二塁走者の生還を許した。「見苦しい守備だった。一晩中、寝られないくらい、悔しがらないとダメ」。連勝が4で止まった原監督の怒り。その言葉が亀井の耳にも届いた。「寝付きが悪かった。反省したり、悔しがったり」。6回無死一塁ではバント失敗。精神状態は前日からさらに追い詰められたが、土壇場で汚名を返上した。

 本塁打したのは2メートル5のミコライオの外角低めの直球。球速表示は出なかったが、常時150キロ近いスピードを出す右腕に対し「直球が速い。ポイントを前に」と意識を置いた。さらにバットを指2本分短く持ち、角度のある低めの難しい球を左手で強く押し返した。「あのボールを放り込む人はそうそういない。いい選手なんだよ、カメは」。試合後、大阪移動前の東京駅のホームで原監督は熱っぽく言った。

 09年に5番で打率・290、25本塁打して優勝に貢献。だが、もう一つ力を出し切れない状況が続いた。ここ数年は外野から三塁へコンバートされ、一塁も二塁も守るなど便利屋のような立場も、静かに受け入れてしまう。だが、この日は反骨心の塊となった。「あのくらい開き直ってくれるといい。そこまでに時間のかかるタイプ。まだ貸しがたくさんあるよ」と原監督。あえて口にした厳しい言葉で覚醒した亀井に、手応えを感じた。

 24時間前は「見苦しい」と言われた男。会見でも帽子を目深にかぶり目線を上げなかった。指揮官の愛情の裏返しの叱咤(しった)に「そうなのかもしれないけど、そう思えなくて、自分でも悔しかった」と唇をかんだ。もう言わせない。亀井が見せた厳しい表情。それは勝負師の顔だった。

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2012年5月4日のニュース