球団不手際でアウト…井端、日本人初ドーピング違反

[ 2011年9月2日 06:00 ]

ドーピング規則違反の井端のけん責処分と中日球団に対し制裁金を発表する加藤コミッショナー

 プロ野球のアンチ・ドーピング調査裁定委員会(加藤良三委員長=コミッショナー)は1日、中日・井端弘和内野手(36)にアンチ・ドーピング規則違反があったとしてけん責処分と始末書の提出、中日球団に制裁金300万円を科したと発表した。7月12日のヤクルト戦(神宮)後の検査で禁止薬物のプレドニゾロンなどが検出されたもので、治療目的で使用するための除外措置(TUE)申請の不手際から規則違反となった。07年の導入後、日本選手の違反は初めてとなる。

 アンチ・ドーピング調査裁定委によると、井端の検体から検出されたのはプレドニゾロン、プレドニゾン、20β―ジヒドロプレドニゾロン。いずれも禁止薬物とされており、7月30日に中日球団に通知、複数の関係者から事情聴取を行った。その結果、目の治療薬としてステロイド系の抗アレルギー剤であるプレドニン錠を内服していたことが分かったという。

 井端は慢性的な目の疾患のため09年4月21日に治療目的としてプレドニゾロンを使用するためTUEを申請し、認められていた。ただ、使用の有効期限は同年5月30日。調査委は球団に対して有効期限を記した書類をファクスで送ったが、井端にもトレーナーにも提示されなかった。このため再度申請せずとも規定違反にならないと誤認し、井端は今年5月16日から担当医の指示でプレドニン錠を服用。規定違反につながってしまった。

 検出物質はTUE申請が認められれば規定違反にならない特定物質。塗り薬なら申請の必要もないという。井端についてNPB医事委員会の増島篤委員長は「競技力向上に結びつかないことは明らか」とし、酌むべき事情があったと説明。しかし、調査委はプロ野球選手として自己責任を指摘し、けん責処分と今月10日までの始末書提出を求めた。一方、手続き上の大きなミスを犯した球団には制裁金300万円で管理責任を追及。お粗末な管理態勢が日本選手初のドーピング規定違反を生んでしまった。

 ▼加藤良三コミッショナー こういうことが起こったのは遺憾。ドーピングは自己責任であるとともに、プロ野球は管理責任もある。そのため今回の処分になった。

 ▽プロ野球のドーピング検査 プロ選手が参加した00年シドニー五輪前から検査を開始。大リーグの薬物疑惑を受け、07年から罰則規定を設けて本格導入した。違反した場合は(1)けん責(2)1試合以上10試合以下の公式戦出場停止(3)1年以下の公式戦出場停止(4)無期限の出場資格停止――の4段階に分かれる。当該選手は10日以内に所属球団を通じ異議申し立てができる。検査は抜き打ちで試合開始60分前に「ドーピング検査対象試合」を通知し、5回終了時にベンチ入り25選手からくじで「対象選手」を2人ずつ決定する。07年以降1日現在、検査を受けたのは延べ543人で陽性反応は今回で4人目。

 【過去のドーピング】
 ★07年8月=ソフトバンク・ガトームソン投手 禁止薬物フィナステリドが検出され、20日間の出場停止処分。球団には制裁金750万円が科された。日本プロ野球で初のドーピング違反。禁止薬物は服用した発毛剤に含まれていた。

 ★08年5月=巨人・ゴンザレス内野手 興奮薬でもあるアンフェタミンなど4種類の禁止薬物が検出され、1年間の出場停止処分。本人はリウマチ治療などを理由とし故意の使用を否定したが、球団は事態を重く受け止めて解雇した。

 ★08年6月=ヤクルト・リオス投手 筋肉増強剤の一種、ハイドロキシスタノゾロールが検出され、1年間の出場停止処分。球団に報告せずに腰痛緩和のための注射、サプリメントの使用をしていた。球団はすぐに解雇を決定。

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