30勝いける?完ぺき長谷部ローテ確定

[ 2008年3月3日 06:00 ]

<楽天・ロッテ>5回を投げ1安打の好投を見せた長谷部

 【楽天3―2ロッテ】楽天の大学・社会人ドラフト1巡目左腕、長谷部康平投手(22=愛知工大)が2日、ロッテ戦(長崎)でオープン戦初登板。全員右打者のロッテ打線に対して、4回1死まで完全投球。5回1安打1四球無失点で勝利投手に輝き、開幕ローテーション入りを確実にした。奪った5三振はすべて“三種の神器”ならぬ3種類の宝刀・チェンジアップによるもの。昨年12月、アマチュア選手で唯一星野ジャパン入りした実力を証明した。

 ロッカー室から顔を出した長谷部が、ワイシャツの襟元を気にしながら顔をゆがめた。
 「僕、ネクタイの結び目がつくれないんです」
 ロッテナインが聞いたらさぞ悔しかろう。こんな不器用な新人左腕が、堂々のマウンドさばきでデビューを飾ったのだ。
 「初回は力んだけど、2回からはリラックスして投げられた。スピードが出なかったけど、切れはあった。きょうはよかったと思いますよ」
 敵将・バレンタイン監督が9人の右打者を並べて攻略を図ったがお構いなしだ。口では「びっくりした」と言いながら、テンポと制球のよさで4回1死まで完全投球。堀に右前打を許したが終わってみれば5回、17人の右打者相手に1安打1四球で無失点に抑えた。
 完ぺきなデビューを演出したのがチェンジアップだった。「自分の中では3種類ある。(1)ストライクを取りにいく(2)外に抜き気味に落とす(3)真ん中に速く落とすやつです」。大学時代からの決め球、3種類の宝刀を巧みに操って奪った5三振はすべてチェンジアップ、すべて空振りによるものだった。さらに、この試合はベルトの前に一度両手を置いた状態からの変則ワインドアップを披露。「クセがあったのでそれを思い出してアドリブで始めちゃった。でも違和感もなかったし逆に力が抜けた」と修正能力の高さも見せた。
 前回登板2月25日ヤクルト戦(練習試合)から対外試合2戦計9回を1安打無失点の“完封劇”。久米島キャンプ中に長谷部が新人王宣言した際「順番が逆。1軍に残ることが先だ。うぬぼれるな」と怒った野村監督も「あれを見たら褒めざるを得ない。使えそうな気配を感じた。合格点だね。新人王を狙ってもらいましょう」と前言撤回でローテーション入りを確約。「チェンジアップが打者の警戒度、意識度を高めるからキャッチャーの腕の見せどころ。オレがキャッチャーなら30勝?するな。新人王は確実だ」と高く評価した。
 前日はソフトバンク・大場が登板。九州地区の新聞紙上で大きく扱われているのを見た長谷部は「大場より大きくお願いします」と同級生へライバル心もあらわにした。次は8日の中日戦(ナゴヤドーム)で地元・愛知に凱旋登板の予定だ。
 “H(長谷部)I(岩隈)T(田中)”の3本柱がフル回転すれば指揮官の優勝宣言もグッと現実味を帯びてくる。
 「こういうピッチングが続けられるように調整したい」。身長1メートル73の小さな左腕が新人王というでっかい夢へ、一歩踏み出した。

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2008年3月3日のニュース