あえて言いたい 五輪にプロ野球が参加する必要があるのか?
先週開催された国際オリンピック委員会(IOC)の理事会で、20年東京五輪の追加種目がパッケージで承認され、日本が熱望していた野球の実施はほぼ確実となった。そんな時期にこんなことを言うとあちこちから非難の声が飛んできそうだが、あえて言う。果たして五輪に野球は必要なのだろうか? いや、正確に言えば「プロ野球が参加する必要があるのか?」だ。
私自身は決して野球が嫌いな訳ではない。野球記者ではないが一番好きなスポーツは野球だし、昔も今もそれは変わらない。だからこそ、一ファンとして思うのだ。プロ野球にとって一番大事なのはペナントレースであって五輪ではないのではないかと。
野球が五輪から除外された理由の一つに、メジャーリーグの不参加がある。野球が開催された過去の五輪で、米国がメジャーのトップ選手でドリームチームを組んだことは一度もない。おそらく20年の東京五輪も同じだろう。不参加の理由は簡単で、五輪とシーズンの優勝争いの大事な時期が重なるからだ。球団も選手もファンもスポンサーもワールドシリーズ制覇こそが全てであって、五輪のために主力選手を派遣するなどは論外なのだ。なのに日本はなぜ、ペナントレースを放り出してまでメジャーリーグが出場しない五輪に主力選手を送り込もうとするのか。長年のプロ野球ファンとしてはどうにも納得がいかないのである。
IOCの本部がスイスのローザンヌにあることもあり、米国内では五輪は欧州のものという意識が強い。欧州への対抗心もあって、五輪へのリスペクトは日本ほど高くはない。野球以外のプロ競技、たとえばゴルフやテニスでも、五輪回避を表明している海外の有力選手は多い。プロである以上、自分が出場するリーグやツアーに誇りを持って当然だ。メジャーリーグしかり、サッカーのワールドカップしかり。ならば日本のプロ野球も「我こそが一番」ともっとプライドを持とうではないか。
アマチュアの大会だった五輪が今日のようにプロ化、商業化したのは84年のロサンゼルス大会からだ。赤字を国費で穴埋めしていたそれまでの手法を改め、ロス五輪は一切税金を使わず民間の資金のみで行われた。莫大な運営資金を捻出するためにテレビ放映権料を一気につり上げ、それまで数百社に上っていたスポンサーを1業種1社に限定し、商標の独占使用権を与える見返りに法外な契約料を支払わせた。結果、大会は見事に黒字化したが、この方式がその後の大会でも踏襲されたため、テレビやスポンサーは常に莫大な契約料に見合う内容を要求し、IOCはそれに応えるために各競技のプロ化や規模の拡大を際限なく推し進めてきた。もはや五輪を開催できる経済力のある国は限られ、このまま肥大化が続けばいずれ開催地に立候補する都市は一つもなくなってしまうかもしれない。
20年東京五輪は史上最大の大会を目指すのではなく、「参加することに意義がある」五輪の原点に戻る大会になってほしい。そんな思いは所詮、夢物語なのだろうか…。(藤山 健二)
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