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渡部香生子100平も代表 昨夏五輪内定後に苦悩も

[ 2016年4月7日 05:30 ]

レースを終えスタンドの声援に応える渡部
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競泳リオデジャネイロ五輪選考会兼日本選手権第3日 

(4月6日 東京辰巳国際水泳場)
 女子100メートル平泳ぎは渡部香生子(19=JSS立石)が1分6秒57で3連覇を達成。リオデジャネイロ五輪の派遣標準記録を切り、15年世界選手権優勝で内定していた200メートル平泳ぎに続いて五輪代表を決めた。男子100メートル背泳ぎは入江陵介(26=イトマン東進)が3連覇で3大会連続の五輪出場。男子200メートル自由形を制した萩野公介(21=東洋大)は2つ目の出場権を獲得した。男女の200メートル自由形で各上位4選手は800メートルリレーの選考基準をクリアし、代表となった。

 渡部は強かった。200メートル個人メドレー準決勝から約50分後の決勝。後半勝負とみて4位で折り返し、1人、また1人と抜き去った。残り5メートルで1位の鈴木に並んでグイッとタッチ。自己ベストから0秒69遅れた今季世界ランク5位のタイムに「一瞬だけ満足」と笑い「金メダルを獲ってから、つらいことが多かったけど、諦めないできて良かった」と息をついた。

 昨夏の世界選手権200メートル平泳ぎで優勝し、五輪が内定。世界一の“ご褒美”を手にしたが、皮肉にも苦悩を味わった。気持ちが入らず、昨秋の3カ月は練習メニューの3割程度の消化率。練習途中に無断で帰ったこともあった。「ここで(水泳を)やめたら楽になるかな。何でこんなきついことをしないといけないんだ」。自問自答しても答えは見えなかった。

 今年1月31日の東京都選手権200メートル平泳ぎは2分30秒08で9位。むせび泣いた。竹村コーチは、渡部の母・恵美子さんに「指導する3年間で一番最悪の状態です」と告げ、渡部は自宅に戻ると、「お母さん、東京五輪までやらなきゃいけないの?」と漏らした。

 2月に入って練習再開時のミーティング。竹村コーチから涙ながらに「俺がしたいことが分かるか。おまえと頑張りたいんだよ。今の香生子とは一緒に頑張れていない。つまらないし、寂しいんだ」と言われ、心に響いた。「何やってたんだ」。ただ、スイッチを入れても「自分が世界に出て戦っていいのか」と不安がよぎる。それでも3月の最後のグアム合宿。レース水着を着て、やっと気分が晴れた。それは今大会の約20日前だった。

 自信を取り戻したエースはフラッシュに笑顔で応え「去年の世界水泳も(4位の)100メートル平泳ぎからホップ、ステップ、ジャンプした。五輪は100メートルでメダルを獲りたい」と視線を上げた。

 ◆渡部 香生子(わたなべ・かなこ)12年ロンドン五輪に日本選手団最年少の15歳で出場。昨年の世界選手権は女子200メートル平泳ぎで金メダルに輝いてリオデジャネイロ五輪代表に決まり、200メートル個人メドレーでも銀メダル。東京・武蔵野高出、早大2年、JSS立石。1メートル67、61キロ。19歳。東京都出身。

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