トヨタの水素事業トップが語る水素社会“実装”への道とは?【スマートエネルギーWEEK春2024】
トヨタのFC(燃料電池)開発の道のり
トヨタはモビリティカンパニーへの移行を目指す中で、パワートレーンのマルチパスウェイ戦略を採り続けているが、そのなかでFCV(燃料電池車)開発の歴史は比較的古く、乗用車に関しては1992年よりスタートしている。
その後2014年12月に初の市販モデルとして初代MIRAIを発売し、2020年12月に二代目MIRAIへと世代交代。2023年11月にはクラウンセダンにも設定している。その一方で燃料電池バスも開発しており、2018年には「SORA」をリリースした。
しかし燃料電池の技術が活かせるのは、乗用車やバスだけではない。トラックやフォークリフト、鉄道、船舶などのモビリティだけではなく、発電機などにも活用できる。実際これまでに世界15ヵ国・100社以上にトヨタのFCシステムは提供されてきた。
こうした流れは、世界全体がカーボンニュートラル実現に向けて動き出したことで、さらに加速。とあるシンクタンクは、2030年にはグローバルでの水素市場規模が年間5兆円へと急拡大し、とりわけ分野別では商用トラック、市場では欧米中が水素を「つかう」「つくる」領域において大きな需要が生まれると予測しているという。
トヨタ・水素ファクトリーの方針
そしてトヨタは2023年7月、社内カンパニーとして「水素ファクトリー」を発足。その事業方針として、
1.マーケットのある国で開発・生産し、量をまとめてアフォーダブルな価格でお客様にお届けする
2.各地域で有力なパートナーと連携して水素を普及させる
3.技術力を磨き競争力をつける
ことを掲げている。
具体的な取り組みとして、まず日本では、JR東日本が水素ハイブリッド電車FV-E991系「HYBARI」に搭載し、ヤンマーが船用FCシステムを開発。デンソー福島工場では水電解装置で作った水素をガスバーナーで使用しており、豊田合成は高圧水素タンクを用いた貯蔵・運搬システムの商用利用に向けて開発を進めている。
また政府や自治体と連携し、幹線物流において大型トラックを中心として水素の大量消費の動脈を日本中に通す計画を推進。「すでに地域の決定を進めており、様々なお客様にFCトラックをお使いいただき、量をまとめることで、水素がFCトラックも含めて安く普及していく姿が描かれつつある」(山形プレジデント)。
中国ではSinoHytec社との合弁会社によるFCシステムの生産が2024年より開始。また中国の大手大型トラックメーカーとの協業で数十台規模のFCトラック実証実験を実施している。
北米では、トヨタのFCシステムを搭載するパッカー社の量産FCトラックがすでに公道を走行しており、港湾でも「豊田通商を通じて様々なアプリケーションに対して燃料電池を提供している」(山形プレジデント)。
欧州では、2023年に大手トラックメーカーとアライアンスを締結したほか、Corvus社の船舶用FCシステム、EODev社の定置FC発電機向けにトヨタのFCシステムを提供。「トラックだけではなく発電についても、市場のニーズがかなり大きいことに驚いた」と山形プレジデントは述懐し、「水素の使われ方には本当に様々なニーズがあるので、こういったことにもしっかり貢献していきたい」と、水素市場の拡大に向けて強い意欲を示している。
最後に山形プレジデントは、千代田化工建設と共同開発中の水電解装置などについても触れながら、「トヨタ自動車は昨年から水素の事業化にむけて大きく一歩踏み出した。今年はこれを社会“実装”という形で加速させたい」と決意表明し、プレゼンテーションを締めくくった。
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