×

かつて曙太郎は相手を殺す気持ちで土俵に上がると言った 世紀の一戦に向かう井上尚弥は…

[ 2026年4月30日 15:22 ]

<井上尚弥・中谷潤人会見>記者会見に臨む井上尚(左)と中谷(撮影・島崎忠彦)
Photo By スポニチ

 【君島圭介のスポーツと人間】

 相手に敬意を持ってフェアプレーで試合に臨む。近年のスポーツ界では常識となっている。

 そういうことが尊重される時代だし、大事なことだが、ときどきお尻がむずがゆくなる。本当にリスペクトしてるの?

 幕内優勝11回を誇る第64代横綱の曙太郎は米国メディアの取材に応え、「相手を殺す気持ちで土俵に上がっている」と発言した。物騒な言葉ではあるが、そこに取り組み相手に対する最上級のリスペクトを感じたことを思い出す。

 5月2日、東京ドームで日本ボクシング史上最高の試合が組まれた。

 32戦全勝(27KO)の世界4階級制覇王者・井上尚弥(33=大橋)が持つ世界スーパーバンタム級4団体統一王座に挑むのは、同じく32戦全勝(24KO)の世界3階級制覇王者・中谷潤人(28=M・T)だ。

 ゴングの2日前に開催された合同記者会見で、井上は中谷の印象をあらためて聞かれ、こう答えた。

 「とてもクレバーで、真面目で、ボクシングに凄くひたむきに向き合っているなという印象を持つ選手。そういった選手にはこちらもそういう姿勢で挑まないといけないという思いでここまでやってきました」

 これは会見の冒頭で発した言葉で、おそらく井上が時間をかけて準備した本音なのだと思う。

 対戦相手の競技に対する姿勢を最大限に称えながら、なおかつ自分自身はそれと同等かそれ以上の努力を重ねる。これこそ究極的なリスペクトではないだろうか。

 相手を言葉で挑発し、侮辱し、罵り合うトラッシュトークを好む人もいる。だが、所詮は「trash」。ゴミ同然のくだらない言葉でしかない。残念ながら三流エンタメの域を超えず人の心には響かない。

 井上の言葉は、上っ面の敬意ではなく、おそらく曙太郎の土俵での覚悟をも飲み込み消化した上で達した究極の境地だろう。

 そして世界でも類を見ない完成された最強ボクサーにここまで言わせた中谷の存在感にも感動する。

 おそらく5月2日は日本ボクシング史上、いやスポーツ史上最高の試合になる。たった1分の衝撃で終わるかもしれないし、36分間の肉と骨、魂の削り合いになるかもしれない。

 どのような結果であろうと世紀の決戦のリングに上がる2人の勇敢なボクサーに対して、こちらも最大限の敬意を表したい。
 

この記事のフォト

「井上尚弥」特集記事

「中谷潤人」特集記事

格闘技の2026年4月30日のニュース