ボクシング女子・入江聖奈、日本を金で埋め尽くせ!「金メダル空白県」に栄光の輝きを

[ 2020年12月9日 05:30 ]

2020+1 DREAMS

バンテージを巻く入江聖奈(撮影・久冨木 修)
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 【THE PERSON】夏冬を通じて五輪の金メダリストをまだ出していない都道府県が2つある。鳥取と沖縄だ。東京五輪ボクシング女子フェザー級代表の入江聖奈(20=日体大)は鳥取県米子市出身。地元のジムで競技を始め、世界と戦う実力を身につけた。12年ロンドン大会から採用された女子ボクシングの日本勢五輪出場第1号として、本番でも先陣を切り故郷の「金1号」にもチャレンジする。 

 ――鳥取県がまだ五輪の金メダリストを出していないって、知ってますか?
 「それは初耳かも」

 ――47都道府県で金メダルが出ていないのは鳥取と沖縄だけ。
 「沖縄もですか…。意外。やばいな」

 ――逆にチャンス?
 「チャンスですね。ちょっと歴史を変えちゃうかもしれない、鳥取の」

 入江は顔をほころばせた。東京五輪延期が決まる直前に行われた3月の五輪アジア・オセアニア予選では、準々決勝で昨年の世界選手権フェザー級女王ペテシオ(フィリピン)を破って銀メダル。フライ級の並木月海(自衛隊)とともに、日本女子ボクシング史上初の五輪出場権を獲得した。本番ではボクシングで最も早く始まる階級で、メダル決定も一番最初。“鳥取初”はもちろん、日本ボクシング界の歴史を変える舞台が整っている。

 延期決定直後は「緊張の糸が切れたというか、もうあんまり頑張らなくていいか、と思っちゃった」。だが、大学進学を機に昨年から生活していた東京を離れ、鳥取に帰省したのが功を奏した。外出自粛の首都圏とは異なり、感染者が少なかった故郷ではジムも営業。運動する場所を探すのにも苦労していた他の選手とは対照的に、実戦練習を重ねることも問題なく、気持ちは21年へと切り替わっていった。

 東京から戻っただけに帰省中は地元の目が気になり「あまり出歩かないようにしていた」が、すぐ近くにある鳥取の自然に癒やされた。幼い頃から貝を採って遊んだ中海と日本海に面し「鳥取で一番好きな場所」と話す淀江の海。大山にも登った。「仲のいい友人と“星を見に行こう”と20キロぐらい歩いて。5合目ぐらいまで登ったら朝になっていて、母に車で迎えに来てもらった(笑い)」

 ボクサーとしても、正真正銘の“メード・イン・鳥取”だ。小2の時に「暇つぶしで」読んだ漫画「がんばれ元気」でチャンピオンに憧れ、ボクシングでは米子市内唯一の「シュガーナックルジム」に入門。「パンチを覚えるところとか全然面白くなくて、やめちゃおうかと思ったんですけど、週1ぐらいで練習していたら伊田武志会長(現日本連盟女子強化委員長)に“スパーリングする?”と言ってもらって。そこから楽しくなった」

 男子に交じり、今も生命線である左ジャブなどパンチの型を全て教わった。当時からケンカはしない「平和主義者だった」というが、「いいパンチが入って、自分の強さをアピールできた時はホント、うれしくて。パンチ?顔面派です(笑い)」と明かす。実家は米子市内で2度引っ越したが、高3までの10年間は同じジムに通って指導を受け、日本代表になる礎を築いた。

 7月下旬に活動を再開した代表チームは現在、青森で第5次合宿中。入江は苦手の接近戦や、相手との駆け引きを含む懐への入り方をテーマに強化を続けている。アジア・オセアニア予選決勝で完敗したリンユーティン(台湾)に勝つためだ。「ボコボコにされたんで。そこを鍛えないとリンさんには絶対に勝てないので」。高校までは手打ちだったボディーも、日体大入学後の反復練習で武器らしくなってきた。後は試合再開で勘を取り戻し、来年の東京五輪開催を信じて拳を振るうだけだ。

 「どのスポーツでも鳥取県って弱いイメージが強いと思うので、来年の夏にはそのイメージを変えたい」

 ――鳥取県のいいところは?
 「海が奇麗、空気が奇麗、そして人が優しい、ですかね」

 ――県産品で一番好きな食べ物は。
 「二十世紀梨で。おいしいんですよ」

 ――鳥取愛はどのぐらい強い?
 「こんぐらいで」

 両手を左右に広げ、屈託なく笑った。

 【明治安田生命サポート】入江は11月からスタートした明治安田生命の「地元アスリート応援プログラム」の支援を受けている。プログラムは選手が自身の紹介サイトで競技への思いや活動状況を報告する一方、クラウドファンディングなどを活用した支援金贈呈や、地元でのイベント出演を通じ、地域との連携や一体感を生み出す狙いがある。現在、柔道女子の素根輝(福岡出身)ら17競技の若手21人が支援を受けている。入江は「本当にありがたい。今は東京に住んでいるけど、鳥取県民としては鳥取に恩返ししたい思いが強い。結果で恩返ししたい」と話した。

 【沖縄第1号候補は空手・喜友名諒】夏冬を通じ個人・団体合わせた日本の五輪金メダリストは現在195人(海外出身2人含む)。都道府県別では北海道が21人と最も多く、夏季大会では大阪と福岡が12人でトップに並ぶ。冬季大会で1人の岩手は夏季大会の金メダルはまだない。夏冬合わせてゼロの2県のうち、沖縄は空手男子形の世界王者・喜友名諒が東京五輪でも金メダルの筆頭候補。「第1号」の可能性が高いと予想されている。

 ◆入江 聖奈(いりえ・せな)
 ☆生まれ 2000年(平12)10月9日生まれ、鳥取県米子市出身の20歳。飛び込みの東京五輪代表・三上紗也可は小、中学の同級生。
 ☆基礎体力 後藤ケ丘中では陸上部で800メートル専門。1年で全国中学駅伝に出場。「走る、跳ぶ、投げるみたいな原始的な動きは得意と言われる」。逆上がりができず平泳ぎは日体大入学後に習得。「運動音痴なので実技が大変。複雑な動きが入ってくるとダメ」
 ☆ボクシング 米子西高1年時、並木に初黒星。2、3年で全日本女子選手権(少年)2連覇。19年世界選手権はフェザー級準々決勝でペテシオに敗れ8強。身長1メートル64の右オーソドックスタイプ。
 ☆私生活 コロナで寮の門限が午後9時に1時間繰り上げ。「20歳で9時って。もうちょっとしたら出たい」。YouTube観賞などインドア派。「パリピじゃないので(外出できなくても)全然苦じゃない。Switchとかしているのが楽しい」。カエルが好き。

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