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中谷、プロ21戦無敗で世界獲った!“ネクスト尚弥”8回KOで令和初“新王者”

[ 2020年11月7日 05:30 ]

WBO世界フライ級王座決定戦   〇中谷潤人《8回KO》ジーメル・マグラモ● ( 2020年11月6日    後楽園ホール )

8R、ノックアウトで勝利した中谷潤人 右は池原信遂レフェリー(代表撮影)
Photo By 代表撮影

 世界初挑戦の中谷潤人が念願の世界王座を獲得した。新型コロナウイルスの感染拡大後、海外選手を招いた国内初の世界戦で、同級1位ジーメル・マグラモに8回KO勝ち。中学卒業後に単身渡米し武者修行を積んだ異色のボクサーは、プロデビューから21連勝、コロナ禍による2度の延期を乗り越えて令和最初の“新王者”となった。

 待ち望んでいた瞬間が訪れた。ボクシングを始めて10年7カ月、夢だった世界王座獲得。中谷は「たくさんの方々の協力があってこのリングに立てた。その思いを拳に込めました。世界チャンピオンになれて本当に幸せです」と声を弾ませた。

 本来なら4月に行われる予定だった試合はコロナ禍で2度延期。マグラモを研究し、対策を練る時間は十分にあった。1回に左ストレートを良い形でヒットさせて精神的に優位に立つと、2回以降は接近戦に応じた。相手の勢いが衰えた8回、左のロングフックでぐらつかせ、最後は左の連打。一度もダウン経験がないという難敵をキャンバスに沈めた。

 体が小さく空手では勝てなかった少年は、階級制のボクシングと出合い覚醒した。三重県桑名市のKOZOジムで毎日2時間。自宅に戻り、さらに2時間の練習に没頭し、才能は一気に花開いた。中2、中3とU―15全国大会を連覇。自身も3度、世界挑戦経験のあったKOZOジムの石井広三会長(享年34)から託された「世界チャンピオンになるんだぞ」の言葉は、胸に深く刻まれた。

 会長の死もあり、中学卒業後は高校に進学せず13年に単身渡米。元世界2階級制覇王者の畑山隆則氏らを育てたルディ・エルナンデス氏に師事し、腕を磨いた。17歳でプロデビュー。全日本新人王、日本ユース王者、日本王者と着実に階段を上った。世界に手が届こうとした時、コロナという“見えない敵”が立ちはだかったが、「まだ世界王者になるタイミングではなかった」と自分に言い聞かせた。エルナンデス氏は来日できなかったが、スパーリング動画を送って助言をもらい、待たされた期間の分だけ成長した。

 「まだ反省するところもあるし、実力の半分も出せていない。でも、世界王者になれたから100点です」。次世代のホープとして期待される22歳にとってはここがスタート。「防衛戦を重ねたいし、統一戦も視野に入れたい。しっかりチャンピオンロードを歩んでいきたい」と力強く誓った。

 ▼セレス小林氏(元WBA世界スーパーフライ級王者) 中谷君の試合は完璧。打たれ強さもあり、統一戦も狙える。海外でもぜひ見てみたい。

 【データ】
 ◯…中谷はプロ21連勝で世界王座獲得。2000年以降に無敗のまま世界王者になった日本人は15人で、21戦目の戴冠は亀田和毅の28戦目に次ぐ試合数の多さ。
 ◯…中谷は16年に全日本新人王を獲得。新人王を経て無敗での世界王座獲得は95年にWBA世界ミドル級王者となった竹原慎二以来25年ぶり。
 ◯…元号が「令和」になった19年5月以降に日本人選手が出場した世界戦は25試合あり、結果は14勝11敗。勝利は現役王者の防衛と元王者の王座奪取のみで、中谷は令和初の“新王者”に。

 ◆中谷 潤人(なかたに・じゅんと)1998年(平10)1月2日生まれ、三重県東員町出身の22歳。小4から空手を始め、中1でボクシングに転向しU―15全国大会を2連覇。中学卒業後に単身渡米してルディ・エルナンデス氏に師事し、17歳でプロデビューした。16年全日本フライ級新人王、17年8月に日本ユース王座、19年2月に日本王座を獲得。身長1メートル71の左ボクサーファイター。

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