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白井・具志堅ジム閉鎖の理由は?4カ月前に感じた“違和感”

[ 2020年6月14日 08:30 ]

1994年、都内の白井・具志堅スポーツジム建設予定地での地鎮祭で具志堅用高氏とともにクワ入れを行った際の白井義男氏(右)
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 ボクシングの元WBA世界ライトフライ級王者・具志堅用高氏が会長を務める白井・具志堅スポーツジム(東京都杉並区)が25年の歴史に幕を閉じることになった。新型コロナウイルス感染拡大によりボクシングを含むスポーツジムに休業要請が出されたことを受け、同ジムも先月末まで休業していたが、今月1日に一般営業を再開。それから、わずか5日後に公式サイトで7月31日限りで閉鎖することを発表した。具志堅会長は「気力・体力ともにこれまでのように情熱を持って選手の指導にあたるには難しい年齢になったこともあり、ここが潮時と決断致しました」と理由を説明した。

 現役を引退後、タレントとしても活躍している具志堅会長は今月26日で65歳になる。加齢による気力、体力の衰えがあることは否定できないだろう。だが、指導者として一線を退いたとしても、オーナーとしてジムを継続していく道はあったはず。コロナ禍のダメージが大きいことも理解できるが、他の多くのジムが踏ん張っている中、いまだに破られていない13回連続防衛の日本記録を持ち、日本ボクシング界に大きな功績を残した名王者がジム閉鎖という決断を下したことは残念でならない。

 “歯車”が狂い始めたのは2年前。当時、WBC世界フライ級王者だった比嘉大吾が3度目の防衛戦の前日計量に失敗し、王座を剥奪されたことだった。世界戦での日本選手の体重超過による失格は初めて。日本ボクシングコミッション(JBC)は比嘉にライセンス無期限停止、具志堅会長と野木丈司トレーナーに戒告処分を科した。その後、野木トレーナーは責任を取る形で退職した。

 昨年10月に処分が解除された比嘉は今年2月に6回TKO勝ちで再起戦を飾ったが、試合後には「モチベーションが上がらなかったらやめようと思うし、いろいろ考えます」と悩める心境を明かした。控室に戻り、大勢の記者が比嘉を囲んだが、その時に違和感を覚えた記憶がある。次の試合でテレビ解説を務めた具志堅会長が同席できなかったのはやむを得ないにしても、取材終了を切り出す役割を果たすべきジム関係者が不在だったからだ。

 ジムとの関係がうまくいっていないのだろうか?そう危惧した通り、1カ月後には比嘉が契約を更新せず、現役続行を前提にしながらジムを離れた。その後、具志堅会長と同郷で元WBC世界ライトフライ級王者の友利正チーフトレーナーとの契約も解除。それ以前にも有望選手の移籍など求心力の低下を思わせる出来事があった。そこへコロナ禍の追い打ち…情熱が薄れたとしても仕方ないのかもしれない。

 ジム公式サイトによれば、所属プロ選手は12人。東日本新人王予選にエントリーしている選手もいると聞く。具志堅会長が現役時代に所属し協栄ジムで、昨年12月に勃発した休会騒動でも一番の“被害者”は選手だった。再び選手を犠牲にしてはならない。(記者コラム・大内 辰祐)

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