1年11カ月ぶりの優勝 渋野日向子が闘ってきた相手とは

[ 2021年10月15日 07:30 ]

優勝トロフィーを手に笑顔を見せる渋野日向子
Photo By スポニチ

 【福永稔彦のアンプレアブル】女子ゴルフのスタンレー・レディースで渋野日向子(22=サントリー)が2019年大王製紙エリエール・レディース以来1年11カ月ぶりのツアー通算5勝目を挙げた。

 4人のプレーオフを制した直後の優勝インタビューで、渋野はこんな言葉を口にした。「去年は“2019年の自分”を超えることは難しいと思っていた。最近の自分なら“2019年の自分”を超えられると自信を持てるようになった」。優勝会見では「最初は(2019年の自分を)捨てる気持ちだった。最近は2年前の自分のいい部分にプラスアルファで今やっていることを積み重ねていくようにと考えるようになった」とも話した。

 2018年のプロテストに合格した渋野は2019年からツアーに本格参戦した。5月の国内メジャー、ワールドレディース・サロンパス・カップでツアー初優勝を飾ると、8月のAIG全英女子オープンでは日本人として42年ぶりの海外メジャー制覇の快挙を成し遂げた。国内だけで4勝を挙げて賞金ランキング2位になった。

 渋野は「“2019年の自分”が渋野日向子だと自分も思っちゃっているし、思われちゃっている。だから、そこを基準にしてしまっている。基準を変えたい感じではないけど、新しい自分を見つけたいし、つくっていきたい」と言う。

 「スマイリング・シンデレラ」と呼ばれ、国民的ヒロインになった「2019年の自分」は紛れもなく渋野日向子なのだが、そこに止まっていてはいけない。2020年以降はそんな思いを抱えながらもがいてきた。昨オフから取り組んできたスイング改造も、その延長線上にある。

 トップをコンパクトにしてフラットに振り抜く新スイングには批判的な意見もあったが、ドライバーの飛距離も、アイアンの精度もレベルアップした。最近の4試合連続トップ10入り、そしてスタンレー・レディースの優勝でスコアにつながることも証明した。

 「“2019年の自分”が基準となっているものが“2021年の自分”に変わっていってほしいなという願いもある。これから渋野日向子が新しく変わっていくのを自分でも確かめたい。やっとスタート地点に立てたという感じ」。渋野は晴れ晴れとした表情だった。ようやく「2019年の自分」の呪縛から解放されたのではないか。そんな気がした。(スポーツ部専門委員)

続きを表示

2021年10月15日のニュース