神鋼にまた大物 オールブラックスでW杯Vのスミスとクルーデンが加入

[ 2020年7月31日 14:00 ]

 ラグビーの神戸製鋼が31日、ニュージーランド代表84キャップでテストマッチ通算39トライの万能バックス、ベン・スミス(34)と、同50キャップのSOアーロン・クルーデン(31=ともにニュージーランド)の獲得を発表した。両者ともに、母国のW杯優勝に貢献。スミスは15年、クルーデンは11年にウェブ・エリス・カップを手にした。契約期間は非公表。予定では秋頃に合流する。

 世界最優秀選手賞3度受賞のSOダン・カーター(38)と、11年W杯優勝メンバーのSHアンディー・エリス(36=ともにニュージーランド)が、打ち切りになった19年シーズンを最後に退団。この大物が抜けた穴を、再び世界的ビッグネームで埋めた。

 他国代表歴がある外国人枠(上限3人、同時出場は2人まで)を、世界最高のロック、ブレディ・レタリック(29=ニュージーランド)、スミス、クルーデンというオールブラックスの有名選手で固める豪華な陣容になった。

 SOクルーデンは、コロナ禍の影響を受けた19年シーズンから神鋼に入る可能性があった。モンペリエ(フランス)を出る際に、「神戸製鋼に入りたいと打診を受けた」と福本チームディレクターは語る。しかし、当時はカーターとの契約が残っていたため獲得を見送り、キックの名手は、古巣のチーフス(ニュージーランド)に身を置いた。現在開催中のスーパーラグビー・アオテアオラでもプレーをしている。

 CTB、WTB、FBができる万能バックスのスミスも同様の形で、別のチームを“迂回”してから、赤のジャージーに袖を通す。神鋼が15季ぶり日本一に沸いた18年冬、19年W杯後に神鋼に入る話が出たが、やはり外国人枠の関係もあって、セクシオン・パロワーズ(フランス)で1シーズンを過ごした。「スミスも早い段階で決まっていた。神戸でやりたいと言ってくれた」と福本ディレクターは明かした。

 カーターとエリスとの契約満了を待って、満を持して両者を獲得したわけだが、そんな根回しや段取りが組めるのも、元ニュージーランド代表のコーチで、世界で最も有名な指導者の1人であるウェイン・スミス総監督の影響力があるからだろう。名門復活を果たした神鋼の一番の戦力補強は、18年に引っ張ってきたこの名将の存在なのかもしれない。

 世界的選手の加入に沸く影で、前日30日午後に予期せぬトラブルがあった。スミスとクルーデンの加入を、日本協会がホームページで誤って“フライング発表”していた。5~10分程度、公にされた。協会内の人間が気付いて慌てて削除。協会広報は「事務的なミスで、あってはならないこと」と謝罪した。

 この2年、神戸製鋼は魅力的な展開ラグビーで成績を残した。来季の助っ人でも大きな打ち上げ花火が上がる一方で、着実にキャリアを積んでいたSO清水晶大が退団したのは残念なニュースになった。待望の日本人SOである若手社員選手の流出は、神鋼の課題を如実に表す。外国出身者が多くのポジションを締め、日本人の若手が経験を積みにくい環境にある。ビッグネームだけでなく、生え抜きの明るい話題が次に求められることだが、育成をしながら結果を残すことはどのスポーツでも難しく、そう簡単ではない。

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2020年7月31日のニュース