ウィンブルドンに“レジェンド”として招かれた日本人はあの選手

[ 2018年7月5日 17:20 ]

2003年7月、ウィンブルドンテニス女子ダブルスで優勝し、キム・クライシュテルスと抱き合う杉山愛
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 今年のウィンブルドンでは出産から復帰したS・ウィリアムズ(米国)がシード入りしたことがちょっとした議論となった。ウィンブルドンの女子のシードは世界ランキングに基づいて決められるが、主催者側が調整することができる規定がある。

 S・ウィリアムズが復帰してから3カ月。現在の世界ランキングは181位で当然32人のシードには届かない。しかし主催者は彼女を第25シードに組み込んだ。実力と実績をかんがみて、公平な組み合わせを実現するためだった。

 全仏では最後は胸筋のケガで棄権したものの、ブランクを感じさせずに4回戦まで当然のように勝ち上がっただけに、この措置にも納得の意見が多いように見える。ただしシードからはじき出された選手を含めて「不公平」という意見ももちろんある。

 いずれにしろ、ウィンブルドンというプロスポーツ最高峰を舞台に巻き起こった議論は、母親となった選手の復帰の難しさ、スポーツ界の受け入れ体制がまだ十分に整っていないことの証にも見えた。

 今回日本からも、母親として聖地に戻ってきた選手がいる。03年にダブルスで優勝、準優勝も4度を数え、シングルスでも04年に8強入りした杉山愛さん(43)である。

 「アオランギ」と呼ばれる会場内の練習場にいたら、練習を終えてさわやかに汗をかいた杉山さんが引き揚げてきた。杉山さんは往年の名選手が集う「インビテーション・ダブルス」に日本人では初めて“レジェンド”として招かれた。09年に引退してからこれまでにもオファーは受けていたのだという。「これまでも出てくれとは言われていたんですけどね」と今回ようやく首を縦に振った。

 ウィンブルドンにはテレビの仕事で昨年なども訪れており「やっぱり芝は特別だな」と特別な思いを抱き続けていた。ただし15年7月に第1子となる長男を出産。子育てをしながらでは、なかなか自由の利かない身でもあった。子供がもうすぐ3歳となり、少し落ち着いたことも決断を後押ししたのだろう。

 中国の李娜さん(36)とアジア・レジェンドタッグを組んでの参加。自らのアカデミーでジュニア相手にラケットは握っているとはいえ久しぶりの実戦には少し不安もあるようだ。「手の届く範囲に返ってくるボールはいいんですけどね。動くとどうなるか」と笑いつつ「まずはケガをしないこと。健康第一!」と鉄人らしい目標も掲げた。9年ぶりに選手として足を踏み入れた聖地。一緒に来ているというお子さんの前で思う存分に楽しんでもらいたい。 (雨宮 圭吾)

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