金藤 前人未到2分18秒台へ 10年間の夢物語、リオで“最終章”

[ 2016年6月14日 08:20 ]

出発前に報道陣の質問に答える金藤

 リオデジャネイロ五輪競泳女子200メートル平泳ぎで今季世界ランキング1位の金藤理絵(27=Jaked)が13日、成田空港発の航空機で米遠征へ出発した。2月に自身の日本記録を約6年半ぶりに更新し、4月の日本選手権でタイムを縮めて金メダル候補に浮上した。2大会ぶりの夢舞台は東海大時代から10年間指導を受ける加藤健志コーチとの最終章。スポニチ本紙の単独インタビューで、紆余(うよ)曲折の道のりと五輪への意気込みを語った。

 前人未到の2分18秒台を目指した加藤コーチとの10年間の夢物語。その最終章がついに始まる。今後はアリゾナ州で五輪前最後の試合に出場。その後、1カ月は標高が約2100メートルある同州フラッグスタッフの高地で心肺機能を高めてブラジルに入る。27歳は「加藤コーチとお互い最後だと思ってやってきた。金メダルや世界新記録を目指し、2分18秒を目指したい」と力を込めた。

 世界5人目の2分19秒台を記録した大会から2カ月。小3から20年続く競技生活のフィナーレが近づく中、本紙にこみ上げる思いを語った。

 「4月の日本選手権が終わってから、日記をつけるようになりました。練習を振り返れるので。高校から日記はつけたり、つけなかったり。でも、これが最後、と思っているから、今はやれているのかなと思う」

 どんな結末になっても最後と決めた挑戦へ、練習の取り組みも変わった。08年北京以来の五輪だが、引退を覚悟した時期がある。ロンドン五輪を逃し、迷いながら競技を続けて13年シーズンを迎えた。

 「13年世界選手権は4位だったけど、持てる力を全部出せたと思った。十分かなって。やりきった感は大きかった。9月の国体も優勝できて、やり残したとは思わなかった。コーチには“辞めたい”と言った」

 だが、コーチは首を横に振った。葛藤戦う次の1年。今度は強い覚悟で引退の意向を伝えた。それは、14年秋の仁川アジア大会後だった。

 「その1年、どんな結果であれ辞めると思っていた。“辞めます”と言い切ったら、加藤コーチから“周りはみんなおまえのことを考えているのに、何でおまえは自分のことしか考えないんだ”と言われた。それで、分かったよ!って言った。やればいいんでしょ!やりますよって」

 投げやりな気持ちで現役を続行。ただ、直後に旅行で韓国に出掛けて気分転換もした。転機は6位だった15年世界選手権。得意とする後半に伸びなかった。沈みゆく姿を、応援してくれる人が見るラストレースにしたくなかった。だから、腹をくくった。戦う覚悟を決め、誰よりも練習をして2分19秒台の記録も出した。「五輪が終わって、コーチに続けようと言われたら、逃亡します」。本当に最後と決めたから、限界でも挑戦できる。

 「5月のジャパンオープンを終えて凄く自信がついた。5月の合宿中にコーチと話をしたくなくなったり、去年の世界選手権でも雰囲気が、そういうふうになった。でも、試合でそれを切り替えられたので、去年と自分が変われたと思う」

 メダルの色に直結する米国遠征。もう二度と味わうことのないフラッグスタッフの薄い酸素が、金メダルへと進む金藤の最後の難関になる。

 ◆金藤 理絵(かねとう・りえ)1988年(昭63)9月8日生まれ、広島県出身の27歳。08年北京五輪女子200メートル平泳ぎ7位。12年ロンドン五輪は代表入りを逃した。世界選手権の200メートル平泳ぎで09年5位、11年5位、13年4位、15年6位。16年日本選手権で2分19秒65の日本記録を樹立。広島・三次高、東海大、東海大大学院出。1メートル75、64キロ。

続きを表示

この記事のフォト

2016年6月14日のニュース