東京五輪へ…テロ対策を「おもてなし」の一部に考える時代に突入した

[ 2015年11月20日 09:41 ]

<イングランド・フランス>17日の親善試合前にグラウンドに並びテロの犠牲者に黙とうをささげる両チーム(AP)
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 東京タワーとスカイツリーのイルミネーションが赤、青、白のトリコロールに染まっていた。パリの同時テロで犠牲となった方々へ追悼の意を示したもの。世界各地で同じことが行われ、フェイスブックではプロフィール写真をトリコロール化するアプリが出回っていた。

 国境を越えた感情の共有。それはかまわない。しかしその一方で、このような行為そのものがテロリストたちに“報復”への口実を与えているという見方もある。もちろんそれを考慮した上で、自分の意志を示した人もいるだろう。状況は複雑だ。無差別の殺人が正当化されるということなどあってはならない。ただほとんどの人たちがテロに対する防御方法を持ち合わせてはいない。よかれと思ってやったことが、知らぬ間に邪悪な集団を身近に引き寄せてしまうことも頭に入れて置かなくてはいけない時代になった。

 開幕からまだ1カ月が経過していないNBAでは、各アリーナのセキュリティーが極端にきびしくなった。観客は中に入る前に入念な荷物検査を受ける。来年2月にはNFLのスーパーボウルがカリフォルニア州サンタクララのリーバイス・スタジアムで行われるが、米同時多発テロを受けて開催された02年大会(ルイジアナ州ニューオーリンズ)と同様に最大級の警備態勢になるだろう。

 さて4年半後の東京五輪。すでにエンブレムの問題など小さくなってしまった。パリで起こったことは東京では起こらない…。もはやそんな楽観論を支持する人はいない。もめにもめた新国立競技場。未着工ゆえにテロ対策を施す時間が与えられている。

 最悪のシナリオを回避するための方策。これは政府や組織委員会だけでなく、日本人全員で考えるべき課題だ。なぜならテロと対峙した経験が我々にはことのほか少ない。それを積み重ねて形あるものに構築すること。それを「おもてなし」の一部にする時代に突入している。(高柳 昌弥)

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2015年11月20日のニュース