「小さい」原因が分からない ラグビーW杯公式球問題の本質は…

[ 2015年7月12日 08:40 ]

ラグビーW杯2015公式球(左)と、これまでの日本代表公式球

 既視感がある。

 突如として持ち上がった、ラグビーW杯の公式球問題だ。9月に開幕するイングランド大会の主催者から日本代表に15個が送られ、今月6日から宮崎県での合宿で使用し始めた。選手から共通して漏れた声は「小さい」「細い」というもの。特にプレースキッカーのFB五郎丸(ヤマハ発動機)は「飛ばない。50メートルが届かない。芯を食うのが難しい」、所属チームでキッカーを務めるSO田村(NEC)も「しっかり当てないとぶれる」と対応に苦慮している。

 過去3度開催された野球の国際大会WBCでも、日本の投手はNPB公式球とは質の異なるWBC球への対応に苦労した。フッカー堀江(パナソニック)が「持ちやすいし普通のプレーはしやすいと思う」と話したように、プレーに好影響もあるだろう。しかしキッカーにとってみれば、歓迎できる面だけではない。

 「MATCH XV」と名が付いた15年W杯公式球。6大会連続で英ギルバート社が製造したものだが、実は日本代表が昨秋の活動から使用しているボールも「MATCH XV」だ。同社がW杯を見据えて製造し、デザイン以外は全くの同規格だという。しかし実際にサイズを測ると、短径1周の長さがW杯公式球は603ミリで、これまでのボールは613ミリ。選手の感覚が正しかったわけだが、同社の日本代理店であるスズキスポーツの鈴木次男社長(68)も「素材も抜き型も一緒。ギルバート社も“全く変わってない”と言っている」と首をかしげる。つまり今のところ、サイズ違いの原因が特定できないのだ。このままではW杯本番、どんなサイズのボールが出てきても、うやむやにされかねない。

 そもそもトップリーグや各大学リーグなど、国内の主要公式戦はギルバート社の「トリプルクラウン」という日本独自規格のボールが使用されている。田村が「初めて代表に来ると、まずテストマッチ用のボールに慣れるのに時間がかかる。日本だけが唯一、独自のボールを使っているわけだから、変えた方がいいと思う」と主張するように、国際競争力を付けたいのならば、競技環境を国際基準に合わせるのは当然の選択のはず。来年のスーパーラグビー参入、19年のW杯開催と、ビッグイベントが控える日本ラグビー界の舵取りに注目したい。 (阿部 令)

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2015年7月12日のニュース