横綱が変化…鶴竜1敗死守にヤジ飛んだ 理事長は“理解”

[ 2014年11月21日 05:30 ]

豪栄道(左)をはたき込みで破る鶴竜

大相撲九州場所12日目

(11月20日 福岡国際センター)
 前日に初黒星を喫した横綱・鶴竜は注文相撲で大関・豪栄道をはたき込み、白鵬とともに1敗で首位を守った。昇進4場所目にして“横綱初V”を狙う29歳。最高位による立ち合いの変化への批判は免れることはできないが、賜杯への貪欲な思いで大きな白星をもぎ取った。白鵬に敗れた稀勢の里は3敗目で優勝争いから後退し、2敗で追うのは再入幕の栃ノ心だけとなった。
【取組結果】

 「なりふり構わず」という言葉はこの日の鶴竜のためにあった。権威ある横綱の地位という“なり”を忘れ、変化という恥ずべき“ふり”に出た。昇進後から一度も賜杯を抱いていない横綱にとって、それほどまでに欲しかった一つの白星。立ち合いで豪栄道の当たりを受け止められないと悟ると瞬時に右に変わって1敗を守ったが、館内からは「そんな相撲でええんか!」「横綱やろ!」と厳しいヤジが飛んだ。

 「迷った。勝ちたい気持ちが強すぎた」。温厚、利口、真面目といった横綱像を持つ29歳だけに、批判を受けることを理解しているのは当然。大関昇進時には「お客さまに喜んでもらえるよう努力します」という口上も述べた。しかも、先場所13日目には新入幕の逸ノ城に変化を決められて唇を震わせるほど怒り、直後の秋巡業ではぶつかり稽古で3日連続“かわいがり”を行った手前もある。そんな状況でも目の前の白星を取りにいったのは「どこかで意識している」という賜杯への執念と説明するほかない。

 前日の稀勢の里戦に続いての敗戦を免れたものの、土俵下で見守った師匠の井筒審判長(元関脇・逆鉾)は「きのう負けたから勝ちたかったんじゃない?褒められた相撲じゃないけど…」とバツが悪そう。常に優勝が求められる横綱の立場を知る北の湖理事長(元横綱)は「内容は評価できないけど、優勝しかないと思っているのでしょう」と一定の理解を示した。

 いずれにしても、これで優勝を逃せば“恥の上塗り”になることは間違いない。「しっかりあしたから自分の相撲に集中したい」。残り3日間。この日の相撲で覚えた雑念を消すぐらいの“真っ向勝負”で熱い取組を見せた先に、賜杯を抱く資格を得る。

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2014年11月21日のニュース