山県 桐生に雪辱V!日本人初の9秒台へ共闘誓う

[ 2013年6月9日 06:00 ]

<日本陸上選手権第2日>男子100m決勝で優勝した山県。左は桐生

陸上日本選手権第2日

(6月8日 味の素スタジアム)
 男子100メートル決勝で、昨年のロンドン五輪代表・山県亮太(20=慶大)が10秒11で初優勝を飾った。4月の織田記念国際では0・01秒差で敗れた桐生祥秀(17=京都・洛南高)に、0・14秒差をつける完勝。世界選手権(8月、モスクワ)の参加標準記録A(10秒15)を突破していた山県は、日本陸連の派遣設定記録(10秒01)をクリアしている桐生とともに代表に決まった。日本人初の9秒台へ、2人の加速は続いていく。

 スタートからゴールまで独壇場だった。8選手中、トップのリアクションで号砲に反応した山県が、1万7000人の大歓声に乗ってトップのままフィニッシュ。右隣の5レーンを走った桐生は全く視界に入らない。17歳のワンダーボーイに0・14秒差をつける10秒11。初の日本一で、世界選手権代表も決めた。「勝ててホッとしている。落ち着いて100メートルを走れた」。短距離界屈指のイケメンスプリンターが、タイトルの感激に浸った。

 4月29日の織田記念国際。地元・広島で9秒台を狙っていたが、主役は桐生だった。高校3年生が予選で10秒01の衝撃的なタイムをマークし、決勝は0・01秒差で競り負けた。「負けた意識が払しょくできなかった。桐生の影がちらついていた、と言えばそうかもしれない」。年下に敗れた悔しさ、燃え上がるライバル心…。「いろんな思いが交錯していた」と言う中、この日の約10秒間は自分のレースに集中した。リベンジを果たしたゴール後、17歳と握手し、そして抱き合った。

 10日に21歳になる新王者は、温かいハートの持ち主だ。「今まで人の悪口を言ったことがない」と父・浩一さん(53)。年下の桐生に向けるまなざしも、優しさに満ちあふれている。織田記念後、無料通信アプリ・LINEで連絡を取り合うようになった。「速いよ!」と17歳を称える一方で、「試合が続くけど、ケガに気をつけてね」と気遣いのメッセージも送る。「桐生は一緒に強くなっていきたい仲間。世界選手権で桐生が緊張してたら励まし合っていきたい」と優しく笑った。

 昨年のロンドン五輪は準決勝6位。7月のユニバーシアード(ロシア・カザン)を経て臨む世界選手権は、成長を見せつける大舞台だ。「五輪のリベンジがある。準決勝より先に進むために、自分の走りを貫きたい。9秒台は狙っても出ないって実感したので、狙わないつもりで気楽にいきたい。おそらくどこかで出るでしょ」。新エースが無心でゴールに飛び込んだ時、陸上界に新たな歴史が刻まれる。

 ≪観戦の両親も大喜び≫山県の父・浩一さんと母・美津恵さん(56)は、スタンドで息子に声援を送った。浩一さんはレース中、写真撮影を優先して、しっかりと走りを見ることはできなかったが、「いや~、うれしかった。あの子(亮太)が描いたようなレースができたんじゃないかな」と大喜び。世界選手権代表発表の10日は山県の21歳の誕生日で、「本人にとっていいプレゼントになるんじゃないですか」と笑みを浮かべていた。

 ◆山県 亮太(やまがた・りょうた)1992年(平4)6月10日、広島県広島市出身の20歳。小学4年から本格的に陸上を始め、修道高1年時に大分国体少年B100メートルで優勝。昨年のロンドン五輪は準決勝6位で決勝には進めず。自己ベストの10秒07は、日本歴代5位タイ。慶大総合政策学部3年。1メートル77、70キロ。

 ◆男子100メートル
(1)山県 亮太(慶大) 10秒11
(2)桐生 祥秀(洛南高) 10秒25
(3)高瀬  慧(富士通) 10秒28
[世]ボルト(ジャマイカ) 9秒58
[日]伊東 浩司 10秒00
派遣標準記録 10秒01、A標準=10秒15、B標準=10秒21

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