琴奨菊“迷いなし”無心で難敵撃破!無傷6連勝

[ 2012年5月12日 06:00 ]

安美錦(左)を押し出しで下す琴奨菊

大相撲夏場所6日目

(5月11日 両国国技館)
 大関・琴奨菊が安美錦を押し出して6連勝とし、単独トップを守った。迷いのない立ち合いで1横綱2大関を破っている相撲巧者を圧倒。初優勝に向け、安定感抜群の相撲を見せ続けている。白鵬、稀勢の里、把瑠都、鶴竜ら1敗の上位陣も順当に勝利。新入幕の千代大龍ら9人が1敗で追う展開となっている。

 迷いがない。そして何よりも楽しんでいる。全勝街道を突っ走る琴奨菊は低くて重い立ち合いで安美錦のうまさを消した。あとは170キロの石臼のような体を利用して前に進むだけ。「いい感じで体が反応している。踏み込みがいい」。代名詞の「がぶり寄り」を出すまでもなく土俵外へ押し出し、6年以上も日本人の優勝を見ていない館内のファンから大歓声を浴びた。

 大関4場所目。新大関場所こそ11勝を挙げたが、その後は8勝、9勝と明らかに自分を見失った。その原因となったのは他でもない初場所の安美錦戦だった。迷った立ち合いで相手十分のもろ差しを許し、完敗した。「気づかされたのが安美関の相撲」。春場所も2桁勝利は挙げられなかったが、土俵上での気持ちの持ち方を試行錯誤。そして今場所たどりついたのは「殺し合いだと腹をくくる。迷っているうちに殺されている」という境地だ。それは大関昇進の口上で述べた「万理一空」に通ずる。物事は一つの空の下で起こっていると冷静に捉える、と解釈できる江戸時代の剣豪・宮本武蔵が説いた思想だ。

 師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇・琴ノ若)は弟子が横綱に昇進した場合、5年前に亡くなった先代(元横綱・琴桜)と同じ不知火(しらぬい)型の土俵入りをさせると決めている。琴奨菊の故郷は雲竜型土俵入りの基礎をつくったとされる第10代横綱・雲龍が生まれた福岡県柳川市だが、先代は弟子が不知火型を受け継いでくれるのが夢だっただけに、現師匠は「横綱を育てて先代のお墓の前で不知火型を見せたい」と話す。先代にスカウトされて角界に入門した琴奨菊は「その話は早すぎます。一日一番」。初優勝の時まで無心を貫くつもりだ。

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2012年5月12日のニュース