被災高校生のエール受け…穴井、復活への3連覇

[ 2011年4月3日 06:00 ]

男子100キロ級決勝で本郷(下)に一本勝ちし、優勝した穴井

柔道全日本選抜体重別選手権第1日

(4月2日 福岡国際センター)
 男子100キロ級で穴井隆将(26=天理大職)が3連覇を達成し、世界選手権(8月、パリ)代表を確実にした。昨年の世界選手権を制したものの今年に入り国際大会で連敗。ナショナルチームから一時離脱したが、東日本大震災で被災した福島・田村高の生徒たちのエールを受け、復調のきっかけをつかんだ。女子78キロ級の池田ひとみ(25)、同70キロ級の国原頼子(25)と自衛隊所属選手が2階級を制覇。被災地で救助活動を続ける同僚に朗報を届けた。

 最後は鮮やかな出足払いで一本を奪った。男子100キロ級だけでなく、日本のエースとしての期待を背負う穴井が大会3連覇で復調のきっかけをつかんだ。苦悩の冬を乗り越えた26歳は「一番ホッとしたのは(周囲にいる)皆さんじゃないですか」と照れくさそうに笑ってみせた。

 昨年の世界選手権を制し、現在も世界ランク1位。だが、腰痛を発症した1月のマスターズ(アゼルバイジャン)で初戦敗退すると、2月のグランドスラム・パリでも3回戦で一本負けを喫した。天理大時代からの師でもある篠原信一・全日本男子監督は「気持ちに緩みがある」と一喝。先月、東京で行った全日本男子の個別分散合宿には呼ばれず、突き放された。

 「気持ちの切り替えは早い方だけど、さすがに落ち込んだ」。そんな時、練習拠点の天理大にやってきたのが、東日本大震災で被災し、避難してきた福島・田村高の柔道部員たちだった。「僕が励まさなければいけないのに“選抜、頑張ってください”と声を掛けられた。簡単には“頑張るよ”と言えなかった。だけど、これは男としてやるしかない、と」

 筋力に頼りがちだった柔道が、足技から連係する本来のものに戻った。結果で応えようとする純粋な思いが、慢心を取り払った。「形としてできることと、柔道としてやれることがある。きょうは柔道、でしたね」。長い復興への道のりを歩む人々への、エールのお返し。願いを込めた男は、また一つたくましくなった。

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2011年4月3日のニュース