「紅こうじ」死者5人に 毒性高い想定外物質「プベルル酸」原因か?
健康被害の出ている小林製薬の「紅こうじ」サプリメントを巡り厚生労働省は29日、製品を解析した結果、想定していない物質「プベルル酸」が見つかったと小林製薬から報告を受けたと発表した。
プベルル酸は青カビから産生される天然化合物で、厚労省によると、抗生物質としての特性がある。マラリアの治療にも使われる一方、毒性は高いという。健康被害が出ている腎臓への影響は不明で、厚労省は今後、他の含有物質の有無も含め、国立医薬品食品衛生研究所で検証を進める。
小林製薬はこの日、大阪市内で記者会見を行った。小林章浩社長ら幹部が現状や経緯を説明した。当初は、製品や原料から検出された「未知の成分」があるとし、「カビから生成された可能性はあるが、どの構造体かは明確に解明できていない」と話していた。厚労省が発表したのは会見と同時間帯。報道陣からの指摘で検出された成分がプベルル酸であると認め「取り扱ったことのない成分。どのように作用するか分からない。紅こうじの中の何らかの成分とプベルル酸がくっついた可能性もある。腎障害を引き起こす仮説も毒性も分かっていない」と説明した。混入経緯についても調査中とした。
「紅こうじ」を使ったサプリメントを摂取したとみられる健康被害は拡大している。同社はこの日、新たに1人の死亡を確認したと発表。関連が疑われる死者は計5人となった。亡くなったのは70~90代の男女。同社によると体調不良を訴えて通院や、通院を希望する人が計約680人。入院した114人と合わせた約800人について通院費用などを補償するという。
小林社長は「皆さまに言葉に尽くせない大変なご迷惑をおかけしている。本当に申し訳ない」と謝罪。報道陣から、最初の健康被害報告を早く公表していれば死亡は防げた人もいるのではないかと問われ、「言葉もございません」と唇をかんだ。
≪サプリ摂取2人吐き気訴え入院≫小林製薬の「紅こうじ」の成分を使ったサプリメントを巡る問題では、摂取後に腎疾患を引き起こすケースが多数報告されている。富士市立中央病院(静岡県)の医師は29日までに、取材に「(原因は)サプリが一番濃厚だ」と答えた。この病院では2人が吐き気などを訴え入院。いずれも診断は「尿細管障害が原因の急性腎障害」だった。持病はなく、半年ほど前からサプリを摂取。うち1人は退院後に摂取を再開したところ、再び急性腎障害を発症、入院したという。
≪万博出展再検討へ≫小林製薬は来年の大阪・関西万博に大阪府・大阪市が出展する「大阪ヘルスケアパビリオン」にプレミアムパートナーとして協賛している。会見で万博について問われた小林社長は「この1週間、この案件でバタバタしてました。今初めて意識しました」と複雑な表情を見せた。協賛金は5億円以上。「大阪府、大阪市には大変ご迷惑をおかけしてます。持ち帰って議論します」と話した。不参加など対応策を検討することになりそうだ。
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