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鹿島FW鈴木優磨が感じる上位陣との差「1試合や2試合じゃ積み上がらない」常勝復活への道筋とは?

[ 2023年12月5日 08:00 ]

鹿島の鈴木優磨
Photo By スポニチ

 鹿島の23年シーズンが終わった。“新人監督”の岩政大樹監督(41)が率いた常勝軍団は、14勝10分け10敗、勝ち点52の5位でフィニッシュした。

 岩政監督が新しい鹿島を標ぼうしてポゼッション、流動性のあるサッカーを目指したものの「4―3―3」は道半ばでとん挫。伝統の「4―4―2」に変えて勝ち星を積み重ねた。

 ただ、新人監督として及第点ともいえる5位で終えたの岩政体制は1年ほどで終焉(しゅうえん)を迎えた。ここまでチームとしての収穫といえる収穫は乏しく、積み上げという点でもスタイルを構築までは課題は持ち越しとなった。Jリーグでのキャリアハイとなる14得点を挙げたFW鈴木優磨(27)は「今季は長かった。個人としてはサッカー人生で一番長く感じました」と23年を振り返った。

 鈴木はベルギー・シントトロイデンから22年に古巣に復帰。再びタイトルをもたらすことを目指してきたが、2年連続で無冠に終わった。クラブとしても国内主要タイトルは7年連続で逃し続けている。かつての常勝軍団といわれたクラブの現状について、鈴木はこう語る。

 「本当に1人1人が自覚を持って、いつかタイトルが取れるという考えでは落ちていく。選手もそうですけど、鹿島に関わる全員が危機感を持ってとりくまないとまずいなと、帰ってきてからの2年間で感じました。自分も含めて、ちょっと危機感を持って取り組まないと、いろいろな部分で遅れを取るなと感じました」

 鈴木が危機感を感じている要因の一つに、上位陣に勝てなくなったことも挙げられるのだろう。今季は優勝した神戸、2位・横浜、3位・広島、8位・川崎Fに“シーズンダブル”(2連敗)を食らった。4位の浦和はH&Aともに引き分けたが、ACL圏内の上位4チームに1勝もできていない現実がある。鈴木は「川崎Fとかマリノスと試合をすると(差を)感じます」と切り出した。

 「この2チームは急に強くなってきたわけじゃない。彼らと試合をすると、何年も積み上げてきたものがあるという強い信念があって、それを上から振りかざされる、頭からドーンとやれる感じです」

 第33節の川崎F戦(等々力)ではまざまざと“差”を見せ付けられた。前半戦では1―2とあと一歩まで追い詰めたが、シーズン終盤の試合では3―0と完膚なきまでにたたきのめされ、現実を突きつけられた。

 「川崎F、マリノスとやっても、自分たちの良い時間帯はある。でも、彼らは慌てないんです。俺らはたくさん経験してきている、みたいな謎の空気感があるんです。あれって、1試合や2試合じゃ積み上がらない。彼らに逆転されたり、ボコボコにされたりすると、精神的に全部を否定されるような感じがします。僕らも早くもっと積み上げなければいけないものはたくさんある。大きな課題だなと感じている」。言葉を選びながらも、エースは冷静に現状を分析していた。

 国内主要タイトルから遠ざかっている鹿島は、常勝復活を目指して毎年のように「鹿島らしさ」を求めて指揮官を変えてきたが、周りが我慢しながらも、痛みを伴いながらも「川崎Fらしさ」「横浜らしさ」を追求した結果、その「鹿島らしさ」が通用しなくなってきた現実がある。
 鈴木のいう“2強”に対抗すべく、岩政監督にチームを託したが、岩政監督自身「予期せぬところから始まった監督人生。自分の中でうまく準備できていなかったところが、そのまま出てしまったという反省がある」と荷が重かった点は否めない。
 
 強化責任者の吉岡宗重フットボールダイレクター(FD)は「岩政監督のやりたいことに取り組んでいたが、スタイルは自分たちがこう思っても(スタジアムに)来てくれるサポーターが分かるものを出せないとスタイルとはいえない。今年は確立できなかった」と失敗を認め、「鹿島らしさ」を求めて再び監督交代に踏み切った。ただ、いまの鹿島は積み上げた石が鬼によって壊される“さいの河原”のようにもみえる。鈴木のいう危機感とはそんなところにも見え隠れするのではないだろうか。
(記者コラム・河西 崇)

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