なでしこ池田監督 Japan's Wayで頂点奪う 個の勝負にもこだわり W杯開幕まで1カ月
【More W杯】サッカー女子W杯オーストラリア・ニュージーランド大会(7月20日開幕)まで、20日であと1カ月。女子日本代表「なでしこジャパン」の池田太監督(52)が単独取材に応じた。就任当初から“奪う”をテーマにチームを強化。日本人の長所を生かす「ジャパンズ・ウェイ」で世界を驚かすことを誓った。
池田監督にとって初の祭典が、1カ月後に迫った。今月13日にW杯メンバー23人を発表。優勝した11年W杯メンバーで、選出が期待されたFW岩渕真奈はメンバー外となった。
「全体の判断基準として経験が豊富かどうかより、メンバーの組み合わせなどを試行錯誤した上で、現状のプレーのアグレッシブさなどを考慮しました。ポジティブな面が出ると思っていますし、そこがW杯の戦いを考えると必要でした」
岩渕と同じく11年W杯メンバーのDF熊谷紗希、前回大会の経験者のMF長谷川唯らを含めて、W杯を知っているのは9人。ただ、1トップ+2シャドーの前線には未経験者が並ぶ。
「選んだメンバー、そしてグループとしての強みをぶつけていきたい。前線にW杯経験者がいない不安より、このメンバーでどう世界を驚かせるかに頭を切り替えています」
自身が率いたU―20女子日本代表からは、優勝した18年大会のFW植木理子やMF長野風花、準優勝だった22年大会のMF藤野あおば、FW浜野まいから“池田チルドレン”が大舞台に挑戦する。
「22年U―20女子W杯からの引き上げでいうと、プレッシャー下でも周りを見えていたか、技術を存分に発揮できていたか、流れを読めていたか。A代表に交ざっても何かやってやろうという強い気持ちや向上心も基準でした。実際に合宿や国際親善試合に呼んで、プレーや振る舞いを含めて判断しました」
21年10月に代表監督に就任後、W杯を一つの大目標に据えてチームづくりを行ってきた。
「サッカーの本質のところで“奪う”をテーマにしてきました。ゴールを奪う、ボールを奪いにいく。短い代表活動期間で気にしたのは、合宿でどれほどの量を伝えるか。国際親善試合では成功体験と課題の克服とのバランスを取ってきたという実感です」
11年大会以来の頂点をどうつかみ取るか。ハードワークだけでなく、高い位置からの連動したハイプレスがチームの強み。それに加えて、指揮官は勝ち上がるためのポイントに“俊敏性”を挙げた。
「俊敏性や切り替えの早さ、持久力は日本の長所だと思います。そこを生かし、正しい予測をしながら複数人が関わる攻守を展開すれば、FIFAランク上位の国を困らせることは十分に可能です」
高い位置でボールを奪いきり、早い切り替えから相手陣が整う前にゴールに向かってなだれ込む。昨年10月から3バックを導入し、その勢いは加速した。
「その上で選手同士のいい距離感を保つこと、その中でのコンビネーションが大事になってきます。俊敏性と持久力を前面に出しながら数的優位をつくって、局面局面で相手に勝っていきたい」
破壊力をより上げるためには1対1での仕掛けも重要。池田監督は個の勝負にもこだわっていく。
「1対1でガンガン勝負することも必要です。特にサイドですね。例えば右なら清水(梨紗)選手は駆け上がって攻撃に参加するだけでなく、それにプラスして仕掛けてほしい。左なら遠藤(純)選手です」
左右の両ウイングバックはもちろん、他のポジションでも1対1で勝てれば、それは大きなチャンスに直結するからだ。
「サイドでボールを持ったり、ゴール前だったら、目の前の相手をはがすことにトライしてほしい」
27日からは国内合宿を行う。7月14日にはW杯前最後の国際親善試合となるパナマ戦を実施。その後、決戦の地で準備を進める。
「長期間の戦いになるのでメリハリが大切になります。最後の準備として、ピッチ内で自信を持ってプレーするための整理をしていきたい。試合の間隔が短く、移動もあるので、体調面にも細心の注意を払いたいです」
11年大会以来の頂点を“奪う”ことは決して簡単ではない。苦難の連続は覚悟の上だ。池田監督の示す「ジャパンズ・ウェイ」を道しるべに、チーム一丸で突き進んでいく。
◇池田 太(いけだ・ふとし)1970年(昭45)10月4日生まれ、東京都出身の52歳。武南高から青学大を経て、93年に浦和に入団。96年に現役を引退し、翌年から同クラブの下部組織のコーチや監督を歴任した。02年から08年にトップチームのコーチを務め、12年からは福岡のコーチに就任。17年からは年代別の女子日本代表の監督を務め、18年にU―20W杯で日本を初優勝に導いた。22年大会では準優勝。21年10月からなでしこジャパンを率いる。座右の銘は「凡事徹底」。
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