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八百長に“IT革命”ネット普及で不正が容易に

[ 2011年10月11日 06:00 ]

オンライン賭博で不正を行った疑いで逮捕されたルーニーの父ウェイン・シニア氏

サッカー八百長問題

 欧州を中心にサッカー界で八百長騒動が続いている。トルコリーグで昨季王者フェネルバフチェが今季の欧州CL棄権を強いられ、ギリシャリーグでは3チームが降格。6日にはマンチェスターUのイングランド代表FWウェイン・ルーニー(25)の父がオンライン賭博で不正を行った疑いで逮捕された。インターネットで国境を超え、拡大する八百長の今に迫った。

 八百長といえば試合内容を意図的に操作する不正行為だが、ルーニーの父ウェイン・シニア氏に対する容疑もこれに相当する。スコットランドのリーグ戦で特定チームの退場予想に不自然な金額を投じて見事的中。逮捕された選手ら8人と共謀し、高額配当金をだまし取ったとみられている。

 近年は合法的なブックメーカーを舞台に八百長が続発。不正を容易にしたのがインターネットの普及だ。UEFAのプラティニ会長は「オンラインでの賭けが増えていることに警戒が必要。安全な国はない」と訴える。UEFAでは09年から加盟53カ国で年間3万800試合の賭博情報をモニター。特定の予想に大金が賭けられるなど不自然な動きを徹底チェックしたところ300試合程度で不正疑惑が生じている。

 進行中の試合が対象となる「ライブ・ベッティング」では「次のFK」や「次の退場」などに投票するものもあり、合図を送るなど外部から選手に意思を伝えられればプレー操作も可能。「最初のスローインを行うチーム」という賭けなら、あらかじめ開始直後にボールを外に蹴り出すよう指示していれば的中は容易だ。FIFAとUEFAではライブ・ベッティング禁止を検討している。

 06年にセリエAを揺るがした八百長事件はユベントスなどの強豪が、息がかかった審判に試合を担当させるよう裏工作して勝ち点を確保したクラブ主導型。勝利至上主義が招いた悪事だった。しかし、最近は犯罪組織が関与し、選手や審判を使ってブックメーカーから大金を引き出すパターンが目を引く。不正の対象は注目度が低く、低年俸の選手を買収しやすい下部リーグや東欧などマイナーなリーグが主流だ。

 元ICPO(国際刑事警察機構)職員で八百長撲滅を目指すFIFAのイートン保安担当によれば、買収された審判は最低1万ドル(約77万円)の見返りで試合の結果を操作。非合法の闇賭博も含めるとアジアでは年間4500億ドル(約35兆円)もの資金が賭け金に投じられているとの報告もあり、犯罪組織が数億ドルの利益を得ているという。

 それでもイートン氏は最近の八百長続発に「良いサイン。目が届かなかったところまで捜査できている」と前向き。FIFAは八百長対策でICPOに今後10年間で2000万ユーロ(約21億円)を拠出する。「ファンが八百長で結果を信じなくなれば、われわれは信頼を失う」とはFIFAのブラッター会長。サッカーの尊厳が問われている。

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2011年10月11日のニュース