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エリート候補生 世界を視野に「相撲に学べ」

[ 2011年2月13日 06:00 ]

力士に交じって朝稽古を行う(奥の列左から)浅岡大貴、金子翔太、小池龍太

 相撲トレで長友になれ!日本サッカー協会(JFA)のエリート養成機関「JFAアカデミー福島」の男子3期生15人が12日、八百長問題に揺れる大相撲の5部屋に分かれ、相撲部屋実習に臨んだ。東京都中野区の貴乃花部屋で行った実習を視察したJFA名誉会長の川淵三郎キャプテン(74)は、相撲の基本動作が体幹強化に有効と指摘。将来日本サッカーを背負うエリート候補に実習の意義を熱く訴えた。

 八百長問題に揺れる角界で、サッカー界が誇るエリートの卵が貴重な体験を積んだ。貴乃花部屋で行われた朝稽古は約3時間半。まっさらなまわしを締め、力士に比べ、ひと回りもふた回りも小さく見える3選手が四股、てっぽう、すり足など相撲の基本動作に取り組んだ。いずれも体幹の力強さとバランスが問われるもの。3選手からは滝のような汗が流れ出た。

 稽古後、視察した川淵キャプテンは3選手を呼び止め「なぜ長友はインテルに行けたと思う?」と問いかけた。きょとんとする選手たちに「体幹を鍛えたから小さな体でもひのき舞台に立てる。相撲の基本動作は全てのスポーツに共通するが、特にサッカーには有効。そういうことを念頭に取り組んでほしい」と続けた。セリエAの名門インテル・ミラノ移籍を実現させた長友に続けという熱いメッセージだった。

 相撲部屋実習は今年で3回目。09年には、1期生のDF古山瑛翔(17)が実習で股割りを完璧にこなし、貴乃花親方から「相撲をやらないか」とスカウトされた逸話を残した。その古山は現在フランス1部ボルドーに練習参加するほど“出世”した。元大横綱の眼力もさすがだが、競技は違っても、成功する者には共通項があることが実証された形だ。

 実習前に、八百長問題が発覚したが、JFAの田嶋副会長は「問題は一部のこと。われわれにとって大事なカリキュラム」と中止は一切考えなかった。川淵キャプテンも「力士の悩みも聞けば良いと思う。自分たちがいかに恵まれてるか、そう認識できるだけでも大きい」と意義を語る。もちろん、相撲の伝統や歴史を肌で感じ、力士が砂まみれになって稽古する姿から刺激を受けることにも大きな意味がある。

 2泊3日の実習は13日が最終日。ぶつかり稽古に挑戦する予定だ。貴乃花親方は3選手に「覚悟しとけよ」と告げ、自ら胸を出すことも示唆した。実習生の1人、DF小池龍太(15)は「緊張するけど体幹を鍛えて世界に羽ばたきたい。目標は長友選手」と目を輝かす。サッカー界のエリートの卵にとって格好の“力水”となりそうだ。

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2011年2月13日のニュース