スエヒロジョウオー“女王”血脈が築く活気ある牝系

[ 2017年8月23日 12:34 ]

現役の繁殖牝馬と一緒に過ごすスエヒロジョウオー
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 現役時代にG1は1勝のみの“一発屋”だったスエヒロジョウオー。しかし母としては重賞2勝のスエヒロコマンダーをはじめ、後世にその血を脈々と伝えている。かつての3歳女王が余生を過ごす北海道新冠町の小泉牧場を訪れた。

 その血を継ぐ馬が次々にターフを賑わし、活気ある牝系を築いている。92年の阪神3歳牝馬Sを人気薄で制したスエヒロジョウオー。その後は勝てないどころか、掲示板に上がることすらできなかったため、どうしても“一発屋”のイメージがつきまとう。ただ、繁殖牝馬としての活躍ぶりを見れば、G1制覇は実力によるものだったと確信できるはずだ。小泉牧場の取締役会長を務める小泉賢悟さん(69)は「もう繁殖は引退しましたが、子出しは本当に良かったですね」と目を細める。

 「初子のスエヒロコマンダーから、ほぼ毎年のように子どもを産んでくれました。自身に似て小さい子どもが多かったから、何頭も産めたのかもしれません。子どもや孫が繁殖として牧場に帰ってきているし、牝系は残っていきますよ」

 決して牧場の期待馬ではなかった。G1を勝った時の馬体重390キロが示すように、当歳の頃から小柄で目立たなかった。

 「同世代にメスは8頭いたけど、いつも後ろの方が歩いていて、“この馬、これで走れるのかな!?”という感じでした。(母イセスズカの)オーナーが引き取ったけど、セリじゃ売れなかったでしょうね」

 やはりと言うべきか、デビュー戦は8着。しかし、ここからサクセスストーリーが始まる。2戦目の未勝利を6番人気で勝つと、5戦目のきんせんか賞を12頭立ての最低人気で差し切って2勝目。続く阪神3歳牝馬Sは単勝35・9倍の9番人気と軽視されていたが、またも大外から突き抜けて2歳女王の座に就いた。

 「あの日は私の誕生日だったんです。人気はなかったけど、きんせんか賞の脚を使えれば勝てるんじゃないかと思っていました。今でも“小泉牧場といえばスエヒロジョウオー”って覚えられているし、この馬には感謝しています。この母系は長生き血統なんで、まだまだ元気でいてくれるはずですよ」

 孫のマイネルロブストとアルマワイオリは、いずれも朝日杯FSで2着。戴冠にあと一歩まで迫った。スエヒロジョウオーに続く、一族からのG1馬誕生が待ち遠しい。

 ◇スエヒロジョウオー(牝27)1990年(平2)4月16日生まれ。父トウショウペガサス、母イセスズカ。生産者は北海道新冠郡新冠町の小泉賢悟氏。現役時代は11戦3勝、うち重賞1勝。デビュー5戦目のきんせんか賞を12頭立ての最低人気で制して2勝目を挙げると、続く阪神3歳牝馬Sも9番人気ながら差し切り勝ち。当時の馬体重は390キロで、71年オークスを制したカネヒムロの384キロに次ぐ、史上2番目の軽量馬体重GI制覇だった。

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2017年8月23日のニュース