【密着!池江厩舎】(4)池江師が語る 2012凱旋門賞ゴール前

[ 2013年5月20日 06:00 ]

馬房でくつろぐオルフェーヴル

 桜井聖良の短期連載第4回は池江調教師に独占インタビューをさせていただきました!オルフェーヴルについて、そして凱旋門賞への思いについて伺いました。 

 ――オルフェーヴルに馬房であいましたが、おとなしいんですね。甘えてきたり、撫でさせてもくれました。

 「女の子には優しいんですよ(笑い)。女性だってわかっているんですよね。なんせうちのスタッフはみんな苦労してますから」

 ――自分より弱い者だから変なことはしないでおこうと?

 「そうですね、ちょっと賢すぎるかなと思うところもあります。もっと単純でいいのになって」

 ――昨年の凱旋門賞(2着)は負けて強しの内容でした。あのレースを見てどう思われていましたか?

 「まじめに走ったら世界一なのになんで悪い癖出したんだって。自爆しちゃったような形でオルフェらしいなとも思いましたけど。やっぱり調教師としてはレースでそういう悪い癖が出ないようにしないといけないので、僕の技術が足りなかったなぁと反省しました。騎手のせいにはしたくないですね」

 ――自分にもどかしかった?

 「そうですね。あそこまで言うことを聞かない馬だってことを、調教の段階でスミヨン騎手にもっと理解をさせておくべきだったと思いました。彼自身もかなり研究してくれていたみたいですが、結果的にセーブできなかったと言っていましたから。守りに入って調整してしまったのがね…。ヨーロッパの馬、特にフランスの馬は大草原で開けた場所で真っすぐ走らせる調教をするんですね。そういう調教場もあったので、前哨戦のフォワ賞と凱旋門賞前にそこにもっていこうかなとは思ったのですが、逸走まではいかなくてもよれて捻挫でもしたらどうしようと守りに入ってしまいました」

 ――万全の策として違う調教場を使ったのですね?

 「逸走したら怖いので、レゼルボアという左右が4、5階建てぐらいの高い林で覆われた狭い調教場で追い切りをしたんです。馬にブリンカーをつけたような効果のあるコースと言えばわかりやすいかと思います。フォワ賞の1週間前追い切りもその調教場だったのですが、そこでスミヨンが初めてオルフェに乗りました。そしたら“今まで俺が乗った馬の中でも優しい方に入る。よれる気配も全くない”と。オルフェを自由にコントロールできるとスミヨン騎手も思ってしまったんですよね。だけど、それはコースがそうさせていた。“これはとんでもないきかん坊だ”ってことをもっと体験させておかないといけなかったのだと思います。しかも、フォワ賞は少頭数でラチ沿いに進路をとったため、オルフェのよれ方をスミヨンが体感せずに凱旋門賞を迎えてしまったんです。癖を知ってもらうためにだだっ広いコースで1、2回追い切りをすればよかったのかと…。だけど、思い切りがなかった」

 ――これだけの馬ですからね。けがや脚を痛める可能性を考えて避けようとするのは、仕方のないことだと思います。

 「イギリスに留学していたときに言われたんですよ。広いところで乗れる馬は狭いところでも乗れるけど、狭いところで乗れる馬は、広いところでは乗れないよ。広い所を走っている馬が狭い場所にいっても楽にスッといけるけど、ずっと狭い所を走ってきた馬は広いところに行くとオドオドしてしまうから、と。凱旋門賞で負けたときにその言葉を思い出しました。オルフェは栗東でも脚元の保護もあり、坂路で調教をしていました。オルフェ自身のパワーで体が壊れてしまうぐらいの馬なので、平地では調整しにくいんです。栗東の坂路は美浦よりもかなり狭いですし、今までそういうところでしか調教してなかったんですね」

 ――まさにその言葉通りになってしまった、と。

 「凱旋門賞前に広いコースに持っていき、ゴール地点近くで他馬に待っていてもらってもいいかなと思ったのですが、他の厩舎にそこまで迷惑をかけるのは申し訳ないと思い、気が引けた部分もありました。もう少し踏み込んで行けばなぁ。スミヨン騎手ももうオルフェのことは把握したと思うので、今年は昨年のようにはならないと思っています」

 ――今年のオルフェのテーマはもう1歩ステップアップですか?

 「はい。能力が五分だったら乗りやすい馬がやっぱり先に来るんですよね。オルフェは今まで能力だけで押し切っていたんじゃないかなって。とりこぼしていたのは全てあの気性のせいなので、僕としてもどかしかったですね。だけど、気性が悪いからと言って人のいうことを全部聞かすような馬にしてはいけないし、オルフェにはオルフェの良さがあるのだから、そこをもっと伸ばして、悪い癖だけは少しでも改善させたいなと思っています。誰が乗っても勝てるようにしておかないと。という気持ちですね」

 強気の調教が出来なかったのも、これだけの強い馬を管理している立場だからこそ。先生が何度も悔しい表情を見せながらも、気持ちはすでに今年のレースに向かっているのがひしひしと伝わりました。どうか無事に本番を迎えてくれますように。そう強く願いたくなったインタビューでした。次回は池江先生の最強馬の作り方についてお話ししたいと思います。お楽しみに!

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