【日本ダービー】フェノーメノ蛯名「悔し過ぎて…」

[ 2012年5月28日 06:00 ]

<日本ダービー>レースを制したディープブリランテ(右)に鼻差及ばず2着に敗れたフェノーメノ

 ゴール前は2頭の一騎打ちとなった「第79回日本ダービー」。敗れたフェノーメノの蛯名正義騎手(43)は通算20度目のダービー挑戦だったが、悲願成就はならなかった。

 ターフから引き揚げてきた蛯名の目は充血していた。言葉を発することなく、戸田師に両肩を抱きかかえられてVTRルームへ消えた。映像を何度見直しても完璧な騎乗。だが、ダービーの女神はほほ笑んでくれなかった。

 5番人気フェノーメノを中団で折り合わせ、直線、すさまじい形相で追いまくった。インで粘るディープブリランテに馬場の真ん中から1完歩ごとに迫った。かわせば勝てる。内外離れたゴール。蛯名は顔を左に向け、ライバルをにらみつけた。ブリランテが、ほんの少しだけ前にいた。20回目のダービー挑戦。1年のモチベーションにしてきた栄冠に約23センチの鼻差だけ届かなかった。

 「悔し過ぎて何も言いたくない。でか過ぎる(鼻の)差だ。馬は最高の仕上がり。レースもこれ以上望めない理想的な流れ。でも、完璧ならいいわけじゃない。このレースだけは結果が全て。それだけだ」。VTRルームから重たい足取りで姿を見せた蛯名は、厳しい表情で振り返った。

 青葉賞馬はダービーを勝てない。そのジンクスを破るべく究極まで仕上げた戸田師。「あと50メートルあればかわしていたし内容では勝っていた。ただ、相手は運がわれわれよりも勝っていた」と語った。東京コースの適性が高いことから今秋は菊花賞ではなく、天皇賞・秋(10月28日、東京)、ジャパンC(11月25日、東京)に挑む可能性も口にしたが、逃した3歳春の栄冠はもう取り返せない。「本当は自信があったが、蛯名君にプレッシャーをかけないよう“皐月賞組が強過ぎる”と煙幕を張らせてもらった。策士、策におぼれるだな」と唇をかみしめた。

 「神は試練を与えてくれるよ」。21回目こそ悲願をかなえる。蛯名の新たな1年が始まった。

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