仮面ライダーの町・石巻…はばたけ希望のこいのぼり

[ 2011年4月12日 06:00 ]

がれきの片づけとこいのぼりの準備が進められる石ノ森萬画館の内部

 「仮面ライダー」ゆかりの宮城県石巻市では、こいのぼりが被災者の子供たちを勇気づける。

 市内の名所の一つが、漫画家の故石ノ森章太郎さんの作品を集めた「石ノ森萬画館」。旧北上川の中州にある3階建ての建物は津波に襲われ、1階部分に濁流が流れ込むなどの被害を受けた。今も玄関前には大量の瓦礫(がれき)が積み上がる。この日は展示場所から流された「人造人間キカイダー」のモニュメントが回収された。上半身はもぎとられたまま。スタッフも泥だらけの館内の清掃に汗を流す。再開のメドは立たない。それでも毎年恒例の、こいのぼりを揚げることにした。

 同館の木村仁統括部長(43)は「この辺も、こいのぼりを見なくなった。子供たちを少しでも元気づけることができるなら」と話し、長さ6~7メートルのまごいやひごい、こごいを準備中。こいのぼりをくくり付けるための外灯は流されてしまい、代用できる柱を探している。

 中州は、観光スポットとして親しまれる日和山から一望できる場所にある。JR石巻駅から同館まで延びる「石巻マンガロード」の仮面ライダー像は、津波に負けず立ち続けた。そんな不滅のヒーローとともに、こいのぼりが風に躍る姿は、傷ついた市民、子供たちを元気づける存在になりそうだ。

 津波で自宅が床上浸水した同市南中里の千葉拓人くん(9)は「萬画館は小さなころから何回も行ってる。大きなこいのぼりを早く見に行きたい」と笑顔を見せた。

 同館は石ノ森さんが生前、宇宙船をイメージして設計。漫画で町おこしに取り組む市のシンボルとしてオープンし、昨年は約18万人が来場した。今年は開館10周年で、仮面ライダー誕生40周年にもあたる。テレビ放送も今月3日でシリーズ通算1000回に達し、本来なら夏に大々的な記念イベントを計画していた。地震で白紙となったが、仮面ライダーで街復活を望む声は強い。

 石森プロの早瀬マサト氏(45)は、改造人間という仮面ライダーの設定に「悲しみを背負った人間こそが強くなれるという石ノ森先生の思いが込められている」と語り「その仮面ライダーが復興のシンボルになるなら、ぜひお手伝いしたい。イベントも時期が遅くなってもやりたい」と語っている。

 ≪40周年記念映画好調≫1日に公開された40周年記念映画「オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー」は、地震の影響で公開館数が減ったにもかかわらず前年を上回るペースで観客を集め、興行収入は2週連続1位。早瀬氏は「地震で不安になっている子供を元気にしようと親が連れて行くのでしょう」と話す。萬画館では推定数億円に上る修繕費のための義援金を募っている。詳細は公式ホームページを参照。

 ▽石ノ森萬画館 「仮面ライダー」「人造人間キカイダー」「サイボーグ009」「がんばれ!!ロボコン」などの原作者、石ノ森さんが60歳で死去した3年後の01年7月オープン。仮面ライダー1号、2号のバイク「サイクロン号」のアトラクションなどがある。石ノ森さんは石巻市に隣接の登米市出身。

続きを表示

この記事のフォト

2011年4月12日のニュース