野村謙二郎氏が分析 高卒2年目阪神・前川はスイングもパワーも大卒1年目当時の金本氏より上

[ 2023年7月11日 11:40 ]

6月25日、バウアーから適時打を放つ前川(撮影・北條 貴史)
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 「金本ロード」を歩め!阪神・前川右京外野手(20)について、現役時代に広島の主力打者として通算2020安打を記録し、広島監督も5年間務めた野村謙二郎氏(56=本紙評論家)が分析した。金本知憲氏(55=同)の入団時を知る野村氏は現時点の前川を「1年目の金本よりパワーもあるし、スイングも上」と評価。その上で球界を代表する強打者へと成長した「鉄人」同様、左腕、変化球、外角球、配球といった課題を克服しつつ段階を踏んで進化を遂げていく「強打者への道」を説いた。

《20歳と思えない》 主に広島を拠点に活動する野村氏は、初めて目の当たりにした前川のスイングに目を見張った。高卒2年目の前川を、24歳シーズンだった入団当時の金本氏と比較し、現時点では前川の方が上と評価した。

 【野村氏】 前川は評判通りの逸材と見る。まだ高卒2年目の20歳とは思えない、力強いスイングをしている。金本の若い頃と比べられる向きもあるようだが、正直、大学から入団してきたばかりの1年目の金本よりはパワーもあるし、スイングも上だと思う。ただ金本は、そこからウエートトレーニングで体をつくり上げていったし、スイングも良くしていったけどね。

 現時点でのスイング力は別格の評価。ただし…。一見して課題も見いだした。

 【野村氏】 私が見た試合(6日広島―阪神戦)では外から内に入ってくる変化球で一ゴロ、二ゴロ…という打撃も目に付いた。チームの育成方針はうかがい知れないが、まず今は試合で使ってもらっている以上、結果を出さなければいけない。変化球や外のボールで簡単にストライクを取られているようでは、投手有利のカウントになる。たとえば1球目の変化球をガツンと捉える、外角球をライナーでショートの頭の上を越える――などすれば、その次の打席から相手バッテリーは攻め方を変えてくる。外、内、外、内…と駆け引きが始まり、配球との勝負が出てくる。1軍の試合に出ていると、そういう1試合、1打席が全て経験になっていく。

 前川に対して指摘した課題は、若手時代の金本氏や、広島監督時代に指導した若き日の丸佳浩(現巨人)も直面した課題だった。

《少しずつ着実に》 【野村氏】 後に球界を代表する強打者になる金本だが、その金本でさえ、初めから本塁打を何本も打てたわけではない。左投手を何とか打てるようになって、外角球をライナーでショートの頭を越えられるようになって、その次に相手バッテリーとの勝負が始まる。私が広島監督の時の丸もそう。真っすぐは打てたが、彼も初めからホームランを何十本も打てたわけではない。金本と同じような過程を踏んだ。試合の中で何十回も何百回も失敗して、打てるようになって、相手バッテリーに“外角球も対応してくるな”“簡単に変化球を投げたら痛い目にあうな”と思わせることで、打者のステージは上がっていく。

 左打者の前川にとっては左腕、変化球、外角球、配球…と立ちはだかる課題は多い。それらを段階を踏んで克服していくことが、球界を代表する強打者へ成長する上で必要な道のりとなると説く。そこに近道などない。

 【野村氏】 前川は速い真っすぐを強く打ち返せるという、若い頃の金本や丸をもしのぐ武器を持っているのは確かだ。ただしホームランを打ちたい、打ちたい…というだけだと、成長スピードは遅くなる。段階を踏んで、着実に成長していってほしい。

《バウアー撃ち再び》 ◯…前川は左腕・笠原が先発予定の11日の第1戦(倉敷)はスタメンから外れる可能性が高いが、バウアーが登板見込みの明日12日の第2戦(甲子園)はスタメン出場が濃厚だ。サイ・ヤング賞右腕からは6月25日の対戦(横浜)の5回2死一、二塁の第3打席で右前適時打を放って、2打数1安打1死球だった。本拠地・甲子園での首位攻防戦でも、存在感を発揮してみせる。

 ◯…前川の打席結果球別の成績は直球の打率が最も高く打率.375(24打数9安打)。対して変化球は判明している全球種(カットボール、ツーシーム、スライダー、カーブ、チェンジアップ、フォーク、シンカー)で打率.208(48打数10安打)となっている(※3打数は球種不明)。

 ◯…前川の左右投手別成績は対右打率.279(68打数19安打)に対して対左は同.286(7打数2安打)。一見すると左右投手別の数字に大きな差はないが、左投手相手の打数は右の約10分の1と、対左では、ほぼ起用されていないことが分かる。

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