15年前に妻を亡くした鳥越裕介氏「夢は12球団一斉のピンクリボン活動」

[ 2023年5月9日 09:54 ]

鳥越裕介氏
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 【コラム 鳥越裕介のかぼす論】 2008年7月27日、妻・万美子が乳がんでこの世を去り、もう15年になる。12月には結婚20年。結婚生活は5年もないけど、こういう話をすると今でも涙が出てくるな。

 乳がんの撲滅や検診の早期受診などを啓発する「ピンクリボン活動」をやり始めたのは09年。それによって一人でも多くの人が検診を受けてくればいい。その人が助かるだけではなくて、周囲の家族も助かる。そういった意味で広がっていったらいいなと思った。

 最初は女子高生デーやタカガールデーと一緒にやっているから、ベースがピンクだと思われることもあった。検診車をドーム前に持ってこられたのが、活動開始3年目くらい。帽子にリボンのデザインを入れたり、球団の人がアイデアをくれ、助けてくれた。夢は12球団が一斉に同じ日にイベントをやること。18年からロッテでコーチをやることになったが、井口監督が「うちでもやりましょう」と言ってくれた。一人ではできなかったことが、輪となって広がっていくのが分かった。

 ホークスでの活動は代々、続けてほしいと思い、17年に中村晃へお願いした。誰にしようと考えた時、地味だけど、いい仕事をする。しっかりつないでくれそうだと思った。人を見る目は持っていない方だけど、これだけはよかったと言える。今年は5月20、21日にピンクフルデーがあるそうだ。5年ぶりに福岡に帰ってきて、中村晃がずっとやってきてくれたものがどれだけの規模になったか、この目で見てみたい。

 最近はめったにないけど、亡くなってすぐは大泣きしながら運転したこともあった。思い出の歌とか流れて…。家に帰りたくなくて、ベロベロになるまで飲んで帰ったこともある。その時は自分は世界で一番不幸だと思ったけど、もっと大変な人もたくさんいる。周りにも同じような境遇の人が何人かいて、俺だけじゃないんだと。そういう人たちに救われた。グラウンドに行けば、選手たちもいる。その瞬間は自分を元に戻してもらえた。

 5月14日は母の日。お母さんって、子供にも家族にとってもかけがえのない存在。ただ、母親って、自分より家族のことを優先してしまいがちになる。だからたまには自分を優先する時間をつくってほしい。決して後回しにせずに。今回は野球の話題からは少し、それてしまったけれど、一人でも多くの人が検診を受けてくれることをこれまでも、これからも願っています。(野球解説者)

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