森繁和氏 オリックスは光った中嶋監督の救援陣運用 由伸離脱でも完璧なマネジメント

[ 2022年10月31日 05:30 ]

SMBC日本シリーズ2022第7戦   オリックス5―4ヤクルト ( 2022年10月30日    神宮 )

<ヤ・オ>若月と抱き合うワゲスパック(撮影・大森 寛明)
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 【森繁和 日本シリーズ大分析】日本シリーズはオリックスが2敗1分けから4連勝し、ヤクルトに昨季の雪辱を果たして26年ぶりの日本一を決めた。スポニチ本紙評論家の森繁和氏(67)が今シリーズを総括。宇田川、山崎颯ら若手を育成し、救援陣を整備した中嶋監督、高山投手コーチの手腕を称え、リーグ3連覇、2年連続日本一達成に向けて外国人野手の必要性を唱えた。(構成・浅古 正則)

 オリックスが豊富な救援陣を前面に押し出して日本一をつかみ取った。この試合は山崎颯がオスナに3ランを浴びるなど崩れたが、シリーズ全体を通して宇田川から山崎颯、最後はワゲスパックにつなぐ。想定外にピンチを招いた時はベテランの下手投げ・比嘉がいる。中嶋監督と高山投手コーチが状況に応じて玉手箱から取り出すように適材適所の救援投手が登板した。

 中嶋監督とは西武、横浜時代にコーチと選手の関係で同じユニホームを着た。高山コーチとは西武の選手時代から同じ釜の飯を食っている。西武では上から投げていたが、広島に移籍してからは生き残りをかけてアンダースローに転向した。先発、リリーフの経験もあり、あらゆる選手の指導に対応できる。

 16年から2年間、中日の2軍コーチも任せた。現役引退後は一般企業に勤務した苦労人。上から押しつけるのではなく、若い選手の話を“聞く力”を持っている。選手に寄り添い、無理をさせずに力を最大限引き出した。

 中嶋監督も高山コーチも2軍指導の経験が豊富。オリックスは1、2軍合同でキャンプを張り、コーチ陣の交流も盛んだ。中嶋監督の考えだと思うが日本ハムから厚沢投手コーチを招くなど他球団のノウハウも取り入れている。昨年と同じ対戦となったが、ヤクルトと比べて救援陣に大きな上積みがあった。

 2勝を計算していたエース山本離脱の危機対応も含め第1戦から第7戦まで中嶋監督と高山コーチのマネジメントは完璧。必然の逆転優勝だった。

 日本一に輝いたオリックス。伸びしろはまだある。それは外国人の補強だ。投手はワゲスパックが活躍したが、レギュラーシーズンから外国人野手が全く戦力にならなかった。今季はマッカーシー、バレラ、ラベロが在籍したが、ベンチ入りどころか日本シリーズ出場資格者名簿から外され、帰国していた。

 昨年の日本シリーズを思い出せば、第1戦は7回にモヤが奥川から同点ソロ。王手をかけられていた第5戦には同点の9回、ジョーンズが値千金の勝ち越し弾を放っている。ホームランには試合をひっくり返せる破壊力がある。相手投手も長打力のある外国人がベンチにいるだけで気持ち悪い。ヤクルトがオスナで序盤の主導権を握ったように、外国人のカードがあるだけで試合の運び方も変わる。

 球団フロントも考えているとは思うが、左右で大砲を一人ずつ。20発打てる外国人が欲しい。今年最後の試合で逆転優勝したように、パ・リーグのチームの戦力差はわずかだ。外国人の補強が成功すれば、リーグ3連覇、連続日本一も見えてくる。

 ヤクルトの敗因の一つは村上が打撃でチームを引っ張れなかったこと。第1戦にホームランが出てシリーズの主役になるかと思ったが、オリックスの投手陣にうまく内角を攻められ、レギュラーシーズンのような強い打球が影を潜めた。前を打つ山田が不振。重圧は大きかったと思うが、そこを突破して僅差の試合で打ってこそ4番。少し酷だが、村上にはこの屈辱をバネにして来年“本物の4番”になってほしい。

 投手陣ではマクガフで接戦を勝ちきれなかったことが痛かった。シーズン中から安定感を欠き、シリーズでの登板を心配していた。昨年と相手が違えばよかったが同じオリックス。昨年吉田正にサヨナラ打を浴び、ジョーンズに一発を食らっている。今年は第5戦で自らの悪送球をきっかけに試合を壊してしまった。抑えが使えなければ継投も描けない。救援陣の決定的な差がシリーズの勝敗を分けた。

 ≪シリーズ新71奪三振≫今シリーズの両チームの投手成績を見ると、防御率はヤクルトの2.09に対し、オリックスは3.05。本塁打による失点をヤクルトは4点に抑えたが、オリックスは13点もあったことで数字に差がついた。それでも、オリックスはシリーズ新記録となる71奪三振。奪三振率は9.83と高く、ヤクルトの7.10を大きく上回った。中でも救援陣は33イニングで43奪三振。奪三振率は11.73に達し、大舞台で下馬評通りの力強い投球を披露した。

 ≪バレラ、ラベロ退団へ マッカーシーも微妙≫オリックスの外国人野手はレギュラーシーズンで3選手いずれも結果を残せず、来日1年目のバレラと2年目のラベロはクライマックスシリーズ(CS)前に帰国。ともに退団する見込みだ。5月に加入したマッカーシーは9月末に右脇腹を痛め、CSに出場できずに日本シリーズ前の19日に帰国。去就は微妙になっている。

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