阪神・青柳の覚悟 03年井川以来の沢村賞へ「球界を代表するような投手になりたい」

[ 2022年6月15日 05:15 ]

キャッチボールを行う阪神・青柳(撮影・大森 寛明)
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 阪神・青柳晃洋投手(28)がインタビューに応じ、個人タイトルへのこだわりや理想のエース像について明かした。7勝、防御率0・89、勝率・875の3冠に立ち、エースとして開幕当初の大低迷からの逆襲に貢献。阪神では03年井川慶以来の沢村賞を目標に見据え、17日から再開するリーグ戦でも中心としてけん引していく覚悟を示した。(取材・構成 遠藤 礼、長谷川 凡記)

 ――ここまでを振り返って内容、結果をどう感じている。
 「コロナに感染して出遅れたので(※1)、何とか巻き返したいという気持ちだった。例年に比べたらイニングを投げて、球数も投げて、勝っている方なので、スタートは遅れたが、自分の中のスタートダッシュはできたと思う」

 ――印象に残っている試合は。
 「中日の大野(雄)さんと投げたのが、一番印象的かなと思う」

 ――5月6日の投げ合いは延長10回でサヨナラ敗戦(※2)。
 「6回以降は、1点取られたら負けというイメージで投げていた。8回に申告敬遠して満塁で抑えたり、1点を与えないピッチングを意識していたので、他の試合より疲れたというのはある」

 ――昨年と比べて自信になっているのは。
 「キャンプから練習していたボールをシーズンでも投げきれている。それが結果に表れている部分が大きい。やってきたことに間違いがなかった」

 ――個人タイトルは意識するか。
 「出遅れた時点で規定投球回は難しいかもしれないと思った。でも、去年、最多勝や勝率第1位を獲らせてもらい、タイトルは2年、3年と続けたいと思う。去年は防御率が2位だったので、このまま最後まで防御率1位は狙いたい。自分の結果、タイトルを狙う過程がチームの勝利につながると思うので、自分の仕事をして、タイトル争いに入れたらいいなと思う」

 ――今後も成績を残せば沢村賞も見える。
 「去年の最多勝はうれしかったし、勝率第1位も、チームとして負けなかったことがうれしかった。去年はオリックスの山本由伸がほぼタイトルを獲ったので(※3)、物理的に無理じゃないことを証明してくれたので、そこがまずは目指す場所かなと。物理的に獲れるなら、獲れるタイトルは全部獲りたいと思って、シーズンに入っている」

 ――沢村賞にはどんなイメージ。
 「リーグを代表する投手というか、リーグで一番活躍した投手が獲る賞。そこを目指したい。2年前(20年)に(中日)大野(雄)さんが獲ったときのように、完投数(10)、チームを勝たせたいという気迫を含め、僕は大野さんみたいなピッチャーを目指してきた。だから、今年、大野さんと投げ合った時に意識する部分があった」
(続けて)
 「僕の中で一番(沢村賞投手として)見ていたのが大野さんかなと思う。ああいう投手になりたい。自分が投げた試合はしっかり投げきりたい。沢村賞は規定がいろいろありますが、チームとしてのエースだったり、球界を代表するような投手になりたいという気持ちを持っている」

 ――交流戦明けもエースとして期待。
 「結果を求めて、勝つしかない。チームは開幕で大きく出遅れたので、1勝でも多く、1イニングでも多く投げなきゃいけないと思っている。勝つ内容も、打線のおかげで勝てたというよりも、当たり前のように抑えて、当たり前のように勝ちたいなと思う」

 ――今年はベンチでも大きな声を出している。
 「1軍に復帰したのは、開幕してから約3週間後だった。その間のタイガースを見ていて、元気がないと思った。ちょっと寂しいなと思った。ファンの方も感じる部分があったと思う。僕も見る側に回って、“負けていても元気良く”というのは大事だと思った。ベンチの声は、これから点を取りにいくんだという意思表示にもなると思うので、スゴく必要なことだと思う。だから、自分が上がってきた時には意識的に声出しをしていた」

 ――雰囲気の変化はどこで感じるか。
 「僕は週に1回しかベンチに入らないので、チームの雰囲気が変わったかどうかは分からないが、僕が投げる試合では楽しく、元気良くやりたいと思っているので そこは変わったかなと思う」

 ――いまの順位は去年の同時期と比べて大きく違う。
 「去年は1位を守らなきゃ…というのがあったが、今年は勝つしか上にいく方法はない。自分にできることは、1週間に1回の登板で勝つ可能性があるピッチングをするだけ。今年は(出遅れた分)全員で勝つしかないので、意識の違いでは、昨年より、より勝ちにこだわる部分が(チームに)あるのかなと思う。もちろん優勝したい」

 ――交流戦の防御率0・00は15年のメッセンジャー(阪神)以来。彼の姿をどういう目で見ていた。
 「僕の中のエース像が近いな…というのがランディ(メッセンジャー)。ランディが中5日で投げるときは、周りが登板間隔をずらしていたし、カードの初戦にいつも投げ、長いイニングも投げ、さらに三振も取るというのがランディだった。俺が俺が…じゃないけど、自分がチームを引っ張る、自分が投げて勝つという姿勢を教わった」
 (続けて)
 「ランディは回の途中で代えられると、スゴく怒る印象だった。それはどうなの?と彼に聞いたことがあった。“自分に腹が立つんだ、いい打者の場面で代えられるのはすごい悔しいんだ”という話をしていた。そういう気持ちを持っているのがエースなのかなと感じた」

 ――青柳選手の活躍を見て、変則投法に取り組む子供や選手が増えるかもしれない。
 「僕の投げ方は特殊なので、マネしてもらうことも参考にしてもらうことも少ない。少年野球の監督の中には、横から投げるのが良くないと言う人もいると思う。でも、そういうわけじゃないよ…というのはずっと伝えたかったこと。僕に憧れて、同じような投げ方をしてくれる人が増えれば、すごいうれしい」

 ▽沢村賞 正式には「沢村栄治賞」。史上初の無安打無得点試合を達成した伝説の大投手、故沢村栄治氏(巨人)を記念し、1リーグ時代の1947年に制定された。年間通して最も優れた先発完投型の投手に贈られる賞で、2リーグ分立の50年からはセ・リーグの所属投手だけが選考対象、89年から両リーグに広げられた。当初は記者投票、82年から受賞経験者らによる選考委員会で選出。選考基準は<1>25試合以上<2>10完投以上<3>15勝以上<4>勝率6割以上<5>200イニング以上<6>150奪三振以上<7>防御率2.50以下、の7項目で、全て満たさなければならないという規定はない。

(※1)開幕投手に内定も3月16日に新型コロナ陽性者と接触があり自主隔離。翌17日に陽性判定を受けた。1軍初登板は4月15日巨人戦までずれ込んだ。

 (※2)味方打線が10回2死まで1人の走者も出せない中、青柳は9回を2安打で零封し、大野雄の完全試合を“阻止”。10回1死満塁から石川昂にサヨナラ打を浴びた。

 (※3)昨季のオリックス・山本は球団新の15連勝を達成し、最多勝(18勝)、最多奪三振(206個)、勝率第1位(・783)、最優秀防御率(1・39)を獲得。沢村賞、ゴールデングラブ賞、パ・リーグMVPにも選ばれた。

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