MLBと選手会 7日連続の労使交渉も進展なし 7つの疑問を解説

[ 2022年3月1日 05:30 ]

閑散としたエンゼルスのキャンプ地のチケット売り場(撮影・笹田 幸嗣通信員)
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 労使の対立が続く大リーグは27日(日本時間28日)、フロリダ州ジュピターで機構(MLB)と選手会が7日連続となる交渉を行ったが、目立った進展はなかった。機構は28日(同3月1日)までに合意しなければ3月31日(同4月1日)の開幕を延期し、シーズンを短縮する方針。期限まで残り1日。主要な争点などをQ&Aで分かりやすく解説する。

 6時間近くも行われた交渉。双方の担当者の受け止め方は対照的だった。「生産的な話し合いだった」と楽観視した機構に対し、選手会側は「隔たりは大きい。多くの争点について話はしたが、具体的な提案はなかった」と言った。

 新協定の妥結に向けた認識のずれは思わぬ“場外戦”も生んだ。大リーグ専門局「MLBネットワーク」の看板記者ジョン・ヘイマン記者は情報筋の話としてツイッターに「合意間近。明日(28日=日本時間1日)の夜に交渉がまとまるかもしれない。年俸総額(ぜいたく税課税の基準額)は2億2500万~2億3000万ドル(約261億~267億円)の範囲内に収まる」と投稿。これに対し選手会役員のヤンキースの左腕ブリトンは「正確な情報ではない」とツイッターで反論した。

 交渉は通常ならカージナルスがキャンプを行う施設で21日から実施されている。電撃合意か、開幕延期&短縮シーズン決定か。関係者が出入りする駐車場の脇には、終結を望むファンの姿があった。

 Q1 なんでここまで交渉が長期化しているの?

 A1 近年、チームづくりが激変しています。データ重視で若手を積極起用し、平均年俸は下落の一途。「世界最強の労働組合」と呼ばれる選手会は活躍に応じた年俸を得ることができない若手を救うため、団結しています。

 Q2 今、MLBで最も問題となっていることは何?

 A2 若手の報酬不均衡だけでなく、ドラフトは完全ウエーバー制のため、上位指名権を得るために故意に負ける行為(タンキング)です。昨季はシーズン100敗以上が4球団。下位球団によるドラフト指名権抽選制の導入は大筋で合意していますが、選手会は対象を1~7位、機構は1~4位を主張しています。


 Q3 主要な争点になっているボーナスプールって何?

 A3 年俸調停権(メジャー3年目を終えた選手が取得する権利)を取得前の選手は活躍しても年俸は大幅に上がりません。そのため活躍に応じたボーナスを30球団が負担するプール金から支払う制度が導入されることになりましたが、互いに対象とする選手数が違うため、プール金の総額には約110億円もの差があります。

 Q4 その他大筋で合意していることはあるの?

 A4 両リーグDH制、FA選手が他球団と契約した際に旧球団にドラフト指名権が与えられる補償制度の撤廃です。ともに移籍市場の活発化の狙いがあり、両リーグDH制はナ・リーグ球団主催試合では主に代打待機した二刀流のエンゼルス・大谷の出場機会増加が期待されています。

 Q5 過去に新労使協定に合意しないままシーズンに突入したことはあったの?

 A5 94年、02年の2度。94年は8月に選手会がストライキを決行し、ワールドシリーズが1904年以来、90年ぶり2度目の中止に。02年は選手会が期限に設定した、8月30日朝に合意し直前でストライキを回避しました。

 Q6 誠也は?雄星は?日本選手への影響はある?

 A6 契約が凍結され、ポスティングシステムでメジャー移籍を目指している広島・鈴木誠、マリナーズからFAの菊池の移籍先が決まっていません。鈴木誠は30日間が交渉期限のポスティング公示後、10日が経過した時点で交渉が中断されたので、交渉期間は残り20日間。新協定合意後、移籍交渉を進めることになります。

 Q7 選手たちは現在、どんな調整をしているの?

 A7 球団施設が使えないため、自宅近くのグラウンドやキャンプ地近くの施設で練習する選手が多いです。大谷はすでに渡米しており、菊池、パドレスのダルビッシュらの練習拠点も米国です。ダルビッシュはすでに打者相手の投球を開始し、最速96マイル(約154キロ)を計測したことをツイッターで報告するなど順調なようです。

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