イチローさんが見たマリナーズの今 「チームの柱になれる」選手とは

[ 2022年3月1日 08:00 ]

トス打撃を繰り返すイチローさん(撮影・笹田 幸嗣通信員)
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 「カーン!カーン!」。アリゾナ州ピオリアのマリナーズのキャンプ施設から打球音が聞こえてくる。ロックアウト中のため、メジャーリーガーはキャンプ地に誰もいない。その音がやけに新鮮に聞こえた。

 マ軍は2月16日から傘下マイナーの有望株を50人ほど招集し、3月3日(日本時間4日)から始まるマイナーキャンプを前にミニキャンプを行なっている。その中に48歳になった球団会長付特別補佐兼インストラクターのイチローさんの姿があった。軽やかな身のこなしは20歳そこそこの選手たちとなんら変わらない。来たるべきメジャーキャンプに備え自身のトレーンニングに励み、若手の練習の手伝いをしている。

 「肩がなかなか7割(の出来)までいかない。肩以外は大丈夫です」と話したのは2月24日のことだった。打撃投手登板に備え投球練習も行ったが、力の入れ具合はまだ6割程度。「見ての通り。あんな感じです」と苦笑した。

 だが、日を追うごとに指がボールにかかり、直球は糸を引くように捕手のミットを叩くようになった。「日に日にね」。笑顔で話すイチローさんの横で現役時代の同僚、マイク・キャメロン・インストラクター(49)は「12月に日本の女子高校生のオールスターチーム相手に147球も投げたんだって?クレージーだ。彼はいつもクレージーだ」と笑った。

 イチローさんとキャメロン氏が右翼手と中堅手として進出した01年のポストシーズンから20年が経った。30球団で最も「10月の戦い」から遠ざかっているが、終止符が打たれるのは近い。そんな評価がある。

 1月に野球専門誌ベースボール・アメリカは「今、最もマイナーが充実した球団」にマ軍を1位選出した。同誌によれば、1位に評価された球団は直近17球団中、16球団が2年以内にポストシーズンへ進出している。唯一の例外がロイヤルズだったが、3年目となった14年から2年連続でワールドシリーズに進んだ。

 現在、メジャーのトッププロスペクト(若手有望株)100選手にマ軍選手は5人ランクインしている。そのうち、トップ25には3人。筆頭は全体2位の評価を得る21歳の右投げ右打ちの外野手フリオ・ロドリゲスだ。メジャー40人枠に入っている。

 昨春キャンプ。ロドリゲスはイチローさんにキャッチボールの相手を頼んだ。しかも、毎日だ。何かをレジェンドから吸収したい。

 イチローさんは言った。「続けることがこっちの選手は苦手だけど、彼はそうではない。何か信念のようなものを感じますね」。ロドリゲスは昨年の東京五輪にドミニカ共和国代表で出場した。侍ジャパンとも対戦し、オリックス・山本からは中前打も放った。イチローさんは続けた。

 「オリンピックは彼にとって大きかったんじゃないかな、あの経験は。いいピッチャーをたくさん見たからね、山本とか」。イチローさんはロドリゲスになにか他の選手とは違うものを感じている。「(性格が)明るいだけじゃなくて、うまく言えないけど、なんかこう、チームの柱になれる感じがする。そんな気がします」

 ロドリゲスを含め、メジャーリーガーはいつキャンプに戻ってくるのか。肩はそれまでに万全に仕上げる。イチローさんは今日もトレーニングに励んでいる。(記者コラム・笹田 幸嗣通信員)

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