巨人・坂本　右打者史上最年少2000安打！川上以来64年ぶり記念日猛打賞も

セ・リーグ   巨人3―5ヤクルト （ 2020年11月8日    東京D ）

＜巨・ヤ＞初回2死、プロ通算2000本安打を達成し、記念ボードを掲げる坂本（撮影・木村　揚輔）
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　右打者最速の勲章を手にした。巨人・坂本勇人内野手（31）が8日、ヤクルト戦の初回に左翼線二塁打を放ち、史上53人目、右打者史上最年少の31歳10カ月で2000安打を達成した。3回にはバックスクリーンへ2ラン、4回には遊撃内野安打も放った。2000安打達成試合で猛打賞は、球団では56年の川上哲治以来64年ぶり2人目。NPB史上2人目の3000安打へ、あくまで通過点の猛打だった。

　体は震えていた。初回。外角スライダーを、本来の利き手、左手一本で拾った。坂本らしさの詰まったバットコントロール。左翼線で弾む打球を目で追い、二塁へ。2000安打。頭上で手を叩き、力が抜けたような笑みで、ヘルメットを高々と掲げた。

　「朝起きてから、食欲もなくて、久々に震えるくらい緊張していた。今日打てなかったら格好悪いなと。1打席目に決められてホッとした」

　今季プロ野球で初めて3万人を超える、3万1735人が見守った本拠地最終戦。巨人の生え抜きでは初めて東京ドームで2000安打を達成した。連日、高まる期待の重圧の中で到達した景色。「あの雰囲気は一生忘れない」とかみしめた。

　右打者では史上最年少到達。本来は左利きだが、右打ちに転向した理由の一つは、あの幼なじみだ。小学生時代「昆陽里タイガース」でバッテリーを組んだヤンキース・田中。左翼奥の校舎に向かい連日、飛距離を争った。左打ちではかなわず、右で打ち続けた。負けん気が、右打者・坂本を生んだ。

　一度は野球を捨てようとした。やんちゃな少年は、兵庫を離れ、青森の光星学院（現八戸学院光星）に野球留学。1年の年末年始の帰省後、耳と鼻にピアスをつけて寮に戻り、金沢成奉監督（現茨城・明秀学園日立監督）に退部を願った。「引き留めてくれた。本当に厳しい3年間で野球人生が変わった。今でも頭が上がらない」。この日、球場に招待して感謝を伝えた。

　プロ入り後、坂本を押し上げたのも、負けん気だ。若手時代、粗削りなプレーに原監督から幾度となく「もう使わねえ！」と怒られた。幾度も、目を真っ赤にしたまま守備についた。それでも翌日は「うまくなりたい」と目に力を宿した。指揮官は何度も、坂本の名前がなかったスタメン表を書き換えた。使いたいと思わせ、期待に応える技術で、最高の右打者となった。

　コロナで延期された今季開幕は6月19日だった。1年目の07年、がんで47歳で他界した母・輝美さんの命日。同年5月12日の2軍戦（姫路）に闘病中の母を呼び、本塁打を放った。あれから13年。「1軍でヒットを打っている姿を見ないまま亡くなった。小学生のころから一番応援してくれていた。どこかで見てくれているかな」。観戦した父に雄姿を見せたが、母への報告はオフの墓参りになる。

　3回にバックスクリーン弾を放つなど、3安打で2002安打とした。7回に一度、守備に就き交代するメジャー式演出で、祝福された。「次の目標はそういうふうになっていくと思うけど、まだまだ実感の湧かない数字。2500本をまずは次の目標にしたい」。次は3000。坂本なら届くはずだ。（青森　正宣）

　≪巨人の生え抜きでは6人目≫31歳10カ月での2000安打達成は、68年榎本喜八（東京）の31歳7カ月に次ぎ、72年張本勲（東映）の32歳2カ月を抜いて史上2番目の若さ。右打ちでは77年土井正博（クラウン）の33歳6カ月を抜き最年少となった。また、巨人の生え抜きでは川上哲治、長嶋茂雄、王貞治、柴田勲、阿部慎之助に次いで6人目の達成。1783試合での到達は川上1646試合、長嶋1708試合に次ぐ3位。プロ野球全体でも前記川上を筆頭に8番目の記録。