ヤクルト・五十嵐 クレメンス目指しスピードの美学追求した「和製ロケット」

[ 2020年10月16日 05:30 ]

ヤクルト・五十嵐引退会見

ヤクルトの五十嵐
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 泣きじゃくる姿。それが五十嵐への最初の取材だった。夏の千葉県大会5回戦。敬愛学園の剛腕は船橋に金星を許した。「悔いは…。ないです」。そう言って号泣。悔いはあった。今後の進路を聞いた。「野球はずっと続けていきます」。プロ野球選手の夢はすぐにかなった。

 ヤクルト担当になった5年後にはセットアッパーに成長していた。5年前の丸刈りではなく髪をなびかせ、キムタクのようにかっこよかった。クールな本家と違い、天然的な明るさ。泣いた昔話でいじると「もーやめてくださいよ」と笑った。

 何度も聞いたのは、スピードへの追求だった。「速い球は誰でも投げられるわけじゃない。こだわりはあるし、160キロを投げたい」。憧れを抱いたのは「ロケット」の愛称を持つ剛腕ロジャー・クレメンス。右腕を弓のように引き、力を爆発させるように押し出して投げる。フォームを参考にし、04年には当時の日本最速タイの158キロを連発。同年の日米野球で来日したクレメンスの投球を目に焼き付け「やっぱり生は違う。僕の理想のフォームですから」とうれしそうだった。剛球セットアッパーコンビ・石井弘寿との愛称「ロケットボーイズ」もお気に入りだった。

 そのクレメンスがいたメジャーでもプレーし、自己最速は159キロ。目標の160キロにはあと1キロ届かなかったが、スピードを追い求める姿は五十嵐らしかった。「和製ロケット」の美学だ。(02、03年ヤクルト担当・飯塚 荒太)

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