金子FA残留真相激白 最後は自分の気持ち「今のメンバーでVを」

[ 2015年1月16日 06:00 ]

自主トレを公開しキャッチボールする金子

 昨年11月に国内フリーエージェント(FA)権を行使しながら、最終的にはオリックスに4年契約で残留した金子千尋投手(31)が14日(日本時間15日)、リハビリ先の米国でスポニチ本紙の単独取材に応じた。史上初の国内FAとポスティング制度との併用検討、右肘の故障発覚、そしてメジャー挑戦断念…。FA宣言から残留決断までの43日間、エースの心はどう揺れ動いたのか。自身初の日本一に向け、決意を新たにした沢村賞右腕が全てを激白した。

 ――リハビリの場所として日本ではなく米国を選んだ。現在はキャッチボールも再開している。

 「日本のことを悪く言うわけではないけど、アメリカの方がトレーニングに関しては若干、先を行っていると思う。今までに経験したことがないトレーニング方法もあって、それをやると今まで使っていないところも使えるかもしれない。まずは経験して、自分の体がどう反応するか感じているところです」

 ――照準は3月27日の開幕に合わせているのか。

 「ベストは開幕から投げて、日本シリーズまで投げきること。でも、どうしても開幕に合わせようとなると、(リハビリに)負担がかかってしまう可能性もある。その時その時の体の状態を見極めていきたい。開幕に間に合わないとしても、できるだけ早く復帰して、最後まで行けるように」

 ――オリックスはこのオフ、大型補強(※注1)を行った。目標はやはり優勝。

 「優勝したいと思って練習するのと、優勝するつもりで練習するのでは気持ちの面で違ってくる。後半にいかに本来の力が出せるかどうか。昨年もそのつもりでやっていたけど、それでも(CSで)結果が出なかった(※注2)のは何かが足りない。練習内容なのか、取り組む姿勢なのか。しっかりシーズンの後半に力を出せるようにやっていきたい」

 ――このオフは国内FA権を行使。ポスティング制度でのメジャー移籍を含めて苦悩した。

 「悩みましたね。僕ら80勝でソフトバンクより勝っているんですけど、勝率で負けた。ただの2位より悔しい。今のメンバーで優勝したいというのがあった。でも、その時はメジャーに行けるチャンスが今年で最後かもという気持ちもあった」

 ――もう1年待てば海外FA権を取得できた。

 「そうですね。ただ、僕の場合、ある程度1シーズンやらないと、取れない日数だった。ケガをしてしまえば、もう1年かかる。そんな中でポスティング制度(※注3)が変わって、今ならどの球団とも交渉できる。それは選手としては凄く運がいいなと思ったし、もし国内FAをしてポスティングもできたら、来てくれた全部の球団と話ができる。こんな機会は今年しかないなと」

 ――11月には日米野球もあり、じっくり考える時間もなかった。

 「日米野球も真剣勝負と言われていたし、FA権についてしっかり考える余裕はなかった。僕は2つのことを器用にできるタイプではないので、中途半端に決めたくないというのもあって、FA宣言しました」

 ――日米野球終了後にまず、ポスティング断念を表明した。

 「僕が、プロ入り前からそこを目標にしている選手なら違ったかもしれない。でも、自分が入ってから優勝していないし、メジャーに行けるチャンスはまたあるかもしれないという思いも出てきた」

 ――同じ頃に右肘の遊離軟骨(通称ねずみ)の問題が出た。

 「ねずみは別ですね。日本で頑張ろうと決めた直後に症状が出たので。それがあったからメジャーを諦めたと思う人がいるかもしれないけど、そうではなく、本当にそういう順番だった」

 ――国内に絞ってから半分以上の球団が獲得に動いたとされている。

 「日本って、他のチームに移ることに凄く奥手で、同じチームでやることの方がいいとされている。僕自身は、他人が移籍することは何とも思っていなかった。でも、いざ自分がそういう立場になると、余計なことまで考えてしまう。環境を変えた方が伸びるのではないか。あるいは逆かもとか。今回、いろいろな球団の話を聞かせてもらって、考え方もさまざまだし、視野も広がった。FAをしないと聞けない話だったので、よかったと思っています」

 ――印象に残った話は?

 「ある球団は僕を獲ることによって、どういう効果が生まれるのか、シミュレーションした具体的なデータを見せてくれた。これだけ失点が減って、僕を獲ったことで打者も獲れて、その打者でこれだけ得点力が上がって、勝率はこれぐらいになるとか。分かりやすいし、凄いなと思いました」

 ――どんなデータか?

 「例えば、僕が投げる変化球の変化の幅とか、僕が投げて打者が打った打球の速さとか。日本の球団でもこういう細かいデータを取り入れている球団があるんだと。実際、他の投手より全部データが良くて、“だから是が非でも欲しい”と。そんなデータは見たことがなかった」

 ――移籍も考えた。

 「スポーツ選手って評価は金額に出るじゃないですか。これはどうしようもない。僕の感情を抜きにして、代理人の考えで決めるなら、結果は違っていたかもしれない」

 ――それでも最後はオリックス残留を選んだ。

 「10年やって一度も優勝していないのもあるし、去年できなかった優勝を今のメンバーでしたいという気持ちがあった。みんな年齢も近いし。もちろん、応援してくれたファンの声もあるし、オリックスでなければ今の選手になれていたかも分からない。自分の気持ちを付け加えた時にオリックスが上に来た」

 ――今季に懸けるモチベーションは高い。

 「去年の悔しさがあるので優勝したいし、絶対に妥協はしたくない。つらい時があっても、この気持ちがあることで、もうちょっと頑張れると思います」

 ※注1 日本ハムからFAの小谷野、アスレチックスからFAの中島を獲得。前DeNAのブランコ、前広島のバリントンと助っ人も整備した。4年総額20億円で再契約した金子を含めて、総額41億5000万円を投じた。

 ※注2 昨年10月11日、日本ハムとのCSファーストS第1戦に先発した金子は大谷と投げ合い、6回7安打3失点で降板。救援陣も打たれ大事な初戦を落とした。ステージも1勝2敗で敗退。

 ※注3 旧制度は入札金に上限がなく、落札した1球団としか交渉できなかった。13年12月に成立した新制度では、日本の球団側が入札額を設定。2000万ドル(約23億6000万円)を上限に、複数の米球団との交渉が可能になった。

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