チームを守る決意…原監督自身で決めた「清武さんへ」苦言書面

[ 2013年1月6日 10:28 ]

6月21日、騒動を謝罪した後グラウンド入りする原監督

野球人 巨人・原辰徳監督(中)

 一昨年11月から続いたグラウンド外での混乱。巨人は「堕(お)ちた球界の盟主」とまで言われた。後に解任された清武英利前球団代表兼GMの渡辺恒雄球団会長への告発会見が発端だった。その後、開幕直前には一部選手の入団時の契約金最高標準額の超過問題、そして6月には原監督の過去のスキャンダルが報道された。異常な一年だった。

 「一つずつの事柄がどうというのは、僕らがどうこう言うのは難しい。だから言う必要はないと思っています」。原監督は一連の騒動に関して多くを語ることを避けたが、チームを守るために戦った。その強い決意が表れたのが6月20日に発覚した、過去の女性問題での1億円支払い報道の対応だった。

 東京・大手町の球団事務所で桃井恒和球団代表が緊急会見。3日前の17日に交流戦優勝を飾ったばかりの原監督はリーグ戦再開へ向けジャイアンツ球場で練習を行っていた。事前に「ファンの皆様へ」と題する謝罪の書面に加えて「清武さんへ」という書面も用意。「巨人軍の選手、OB、関係者を傷つける報道が相次いでいます。こんなことがなぜ続くのか。清武さんのほかに、いったいだれがいるのか」と訴えた。「巨人軍の一員だったことを誇りとして、これからを歩んでください。まだ間に合います」。このコメントに原監督の思いの全てが詰まっていた。

 ある球団関係者は「当時は球団や読売グループの上層部が原監督にコメントさせたという報道もあったが、そうではない。原監督自身が決断したうえでの行動だった」と舞台裏を明かした。

 問題が発覚した翌日の6月21日には選手を前に「野球以外のことでメディアを騒がせてしまって申し訳ない。私自身、反省してもう前を向いている」と謝罪した。主将の阿部はこの行動が一体感を生んだと振り返る。「監督はあの時、男らしくみんなに謝った。監督も一人の人間なんだなと思った。だから、勝たないといけないと余計に思いましたよね」。チーム内の動揺やさらなる騒動を避けるため、その後は公の場で沈黙を守る姿勢を崩さなかった。

 逆風に負けず、9月21日に本拠・東京ドームで3年ぶりのリーグ優勝。胴上げで8度、宙に舞った。右翼席へあいさつに向かう原監督は阿部の肩を抱いて言った。

 「苦しかったな…」

 2位中日に10・5ゲーム差をつける独走優勝ではあったが、指揮官の心中を集約した一言だった。

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2013年1月6日のニュース