劇弾男だ!王ラストイヤー衝撃の幕開け

[ 2008年3月21日 06:00 ]

<ソ・楽>9回、ソフトバンク・柴原(中央)が逆転サヨナラ3ランを放ち、ナインから手荒い祝福を受ける

 【ソフトバンク4―3楽天】王監督の“ラストイヤー”が劇的に幕を開けた。ソフトバンクは9回に柴原洋外野手(33)が史上11度目の開幕戦サヨナラ弾となる3ランを放ち、楽天に4―3で劇勝。今季を集大成と位置付ける王貞治監督(67)の5番起用に見事に応えた。5年ぶりの日本一へ、王ホークスが最高のスタートを切った。

 これ以上ない起死回生の逆転サヨナラ弾だ。照れ隠しに舌を出しながら戻ってきた柴原は後輩・井手にはユニホームを脱がされ、ベンチに戻ると観戦した孫オーナーから熱い?抱擁を受けた。
 「追い込まれていたので何とか一塁方向へ打ちたい気持ちだった。引っ掛けてでもライトへ持っていこうと思った。振り返ってこの1勝が大きかったと言われたい」
 2点を追う9回無死二、三塁。内角低め136キロのボール気味のチェンジアップをうまく拾った。大歓声の中、打球は右翼最前列へ吸い込まれた。開幕戦の逆転サヨナラ弾は94年の伊東(西武)以来、14年ぶり。昨年は3月29日の楽天戦、6月29日のロッテ戦でもサヨナラアーチを放っており、まさに“劇弾男”だ。
 あまりに劇的なシナリオは王監督によって書かれたと言ってもいい。一時は「クリーンアップはこのままでいいんじゃないか」と多村、松中、松田で臨む考えだったが、試合前のミーティングで「5番は柴原で行く」とコーチ陣に告げた。王監督は「本当は右、左、右で組むのが一番だけど、柴原には経験がある」と勝負強さを買った。
 03年には打率・333も記録した柴原。復活のきっかけは昨年10月5日(対ロッテ)のシーズン最終戦。無安打で通算成績は1239試合1238安打となった。「安打数が試合数を下回ることはなかった。あれはショックだった」。オフには効率のいいサプリメントの取り方などを独自で研究するなど意識改革。今月5日の西武戦(ヤフードーム)の4回1死一、三塁の場面で初球の抜けたスライダーを見逃し、新井打撃コーチから「意識が足りない」と受けた指摘を真しに受け止め、糧とした。
 6年間の“浪人”はあるが、プロ野球生活50年目に入った王監督も「開幕戦から大興奮だったね。最初はどうなるかと思ったけど」と笑った。「最後のつもりでやる」と強い決意で踏み出した開幕戦。最後は眼鏡を忘れて帰りそうになるほど、劇的勝利に大喜びだった。

 ≪鷹のルーキー50年ぶり開幕勝利≫ソフトバンク大学・社会人3巡目ルーキー・久米が開幕戦でのプロ初白星に声を詰まらせた。「感動しました。こんな大事な試合でマウンドに立たせていただき、抑えてやろうと必死でした。チーム全員で勝ち取った勝利です」。2点ビハインドの8回2死二塁、昨季パ二冠王の山崎を迎えるとベンチは柳瀬から久米にスイッチ。「素晴らしい打者と分かってました」と敬意を表しながら、カウント2―2から外角141キロ直球で見逃し三振に仕留めた。14日に選出された北京五輪代表第1次候補に名を連ねた。「選んでいただいた星野監督のためにも恥じない投球をしたい」。ホークスでは58年の杉浦以来、半世紀ぶりの快挙で、明大の大先輩に少しだけ恩返しした。

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2008年3月21日のニュース