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沙羅 “抑えて”15勝 積雪の影響考慮、ゲート下げて

[ 2014年1月13日 05:30 ]

吹雪の中、1回目のジャンプで99メートルを飛んだ高梨

ノルディックスキー W杯ジャンプ女子個人第7戦

(1月12日 札幌市宮の森=HS100メートル、K点90メートル)
 高梨沙羅(17=クラレ)が悪条件をはねのけて地元で2連勝を飾った。1回目に最長不倒の97メートル、2回目は余裕をもって91メートルにまとめて合計237・1点。2位のコリーヌ・マテル(18=フランス)に距離にして10メートル以上の得点差をつけて圧勝した。降り積もった雪を考慮した“安全運転”のジャンプに徹してもこの強さ。女子最多記録を更新する通算15勝目を挙げ、ジャンプの日本勢では男子の船木和喜と並んで歴代2位の勝利数となった。

 最高のジャンプは五輪本番まで取っておけばいい。ジャンパーとしての本能にフタをして高梨は飛んだ。「見ている方からすると遠くに飛んだ方が楽しいと思うし、私もより多くの距離を飛びたい。でも体のことを考えると飛び過ぎは危ない」

 1回目は直前に飛んだフォクトが転倒した。激しく降る雪がランディングバーンにたまり、足を取られやすい状況だった。それを見てスタートした高梨は97メートルまで距離を伸ばすと、安全を優先するため得点につながるテレマークを入れず、両足で確実に着地を決めた。

 「ゲートを下げたり、安全に着地して(危険から)逃れている感じ」。2回目にスタートゲートを2段下げたのも、1回目の貯金を踏まえた安全策だ。それでもなお勝てる。2位のマテルは「今は高梨が最高のジャンプをしている」と実力差を認めざるを得なかった。

 目先の勝利ではなく、五輪本番のための取り組みだ。今季は7戦6勝。テレビ中継のゲストとして訪れた06年トリノ五輪フィギュアスケート女子金メダルの荒川静香も「期待されて期待通りに戦えるのが凄い。ソチまでの成長が楽しみ」とうなる。一番怖いのは不測のケガで、今は無理する時ではないと冷静だ。

 以前は体もできていなかった上に、飛び過ぎと無理な着地でシンスプリント(脛=けい=骨過労性骨膜炎)の症状に悩まされたこともあった。しかし、今は森永製菓「ウイダー」の牧野講平トレーナーと取り組んだ肉体強化に加え、ケアを受ける回数も増やした。全ては五輪を最高のコンディションで迎えるため。決意は「五輪では天候がどうでもテレマークを入れたい」という言葉にも表れた。

 男子では葛西紀明がジャンプ界を盛り上げている。高梨は「あいさつすると凄く明るく返してくれて盛り上げてくれる。尊敬しかないです」と11日にW杯最年長記録で優勝した大先輩の快挙に敬意を表した。高梨自身も葛西のように41歳まで飛ぶつもりはあるのか。「体がもてば、ですね。想像できないですけど」とはにかんだ。41歳になるまであと24年。それを思えば、やはり今はまだ無理をしなくてもいい。

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