沙羅 黒勝負服だ!“定番カラー”でソチ舞う
黒の勝負服でソチの空に舞う。ノルディックスキー・ジャンプ女子の高梨沙羅(17=クラレ)は8日、W杯札幌大会(11、12日)に向けて宮の森ジャンプ競技場で練習を行った。この日は練習用の白いスーツを着ていたものの、試合ではこれまで通りに黒のスーツを着用することを宣言。カラフルなスーツも増えている昨今であえてシックな黒を選ぶ理由には、高梨の勝負に懸けるこだわりが隠されていた。
試合では黒のスーツが定番の高梨が、この日の練習で白と紫のスーツを着てジャンプを繰り返した。6日にロシアから帰国してさっそくの練習。「ロシアの乾燥が凄かったので」と声はかすれていたが、体調面に不安はなく、飛ぶたびに距離を伸ばしていった。
色が変われば、かなり印象も変わるが、この日のスーツもあくまで練習用で週末の試合では従来の黒に戻す。その理由について高梨は「データを見せてもらったことがあるけど黒の通気量が安定しているので」と理由を語った。他競技では五輪に向けて日の丸カラーのウエアを用意する選手などもいるが、高梨はソチ五輪の勝負服も“黒”と決めている。
ジャンプスーツは空気を通しにくければ空中での浮力を得やすくなり、飛距離が伸びる。そのため国際スキー連盟(FIS)では各選手の条件を平等にするため、生地に制限空気透過率を設けている。外側からも内側からも、1平方メートルで1秒間で40リットル以上の空気を通さなければいけない。
FISが指定した欧州のメーカーの生地を、日本のミズノ社がカッティングして縫製する。色のバリエーションによって、生地の段階では透過率にバラつきが出やすいものも確かにあるという。ただし、その中で透過率が安定している部分をカットして仕立てるため、できあがったスーツで透過率が違うことはまずない。だが、高梨は体で感じられないほど細部まで勝負にこだわっている。
加えて心理的な影響もある。「通気量がそこまで変わらないとしても安心して飛べるんです」。ただでさえ飛ぶたびに条件の異なるジャンプ競技。黒のスーツならば、いつ、どれでも透過率は変わらない。そう思えることで余計な考えが一つ省かれる。そして高梨の黒には優勝を重ねてきた成功体験も染みついている。
94年リレハンメル五輪ではジャンプチームでそろいのスーツも作ったが、それ以降の五輪は各人バラバラのスーツで挑んでいる。男子の葛西紀明なら黄色、伊東大貴なら青と各選手にこだわりがあり、高梨は黒。黒には「内面の弱さを隠して力強さを引き立てる」色彩効果もあるという。金メダルを期待される17歳の女王には、黒の勝負服も支えになる。
≪13勝全て黒≫高梨はこれまでW杯で通算13勝(11~12年=1勝、12~13年=8勝、13~14年=4勝)を挙げているが、その全てで黒のスーツを着用している。今季のW杯では開幕から4連勝を飾るなど、調子は上々。ソチ五輪でも“黒”は大きな力になる。
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