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「GRカローラ誓約書」ってなんだ? 契約から納車までの道のり【GRカローラ長期レポート】

[ 2024年4月7日 12:00 ]

祝当選! 次はオプション選び

販売店の風景。店内にはクラウンスポーツが展示されていた。一部改良を受けたGRカローラの抽選申込みは、「Webで2023年8月23日13時30分から9月11日8時59分まで受付、9月下旬より順次商談を開始。販売の開始は2023年秋頃を予定」と発表されていた。

当選を知らせる電話連絡時に販売店さんでの商談予約を行なった。コロナ禍の収束もあり、“土日はひっきりなしにお客様が訪れる”ということから、平日午前を選択。そして当日、販売店に向かうと驚いた。予想に反して賑わっていたからだ。聞けば新車効果だけでなく、点検や整備、車検の依頼が途切れなく続いているとのこと。

早速、商談を開始する。しかし、テーブルには印刷された紙カタログはない。担当頂く販売員さん曰く「ペーパーレス化が進んでおり、皆さまとはコチラでご商談を進めております」と、手持ちのタブレット画面を向けて説明を続ける。ちなみにトヨタでは「2025年より紙の商品カタログのご提供を終了する」と2024年1月に発表したばかりだ。

カタログをペラペラとめくりながら、「あーでもない、こーでもない、この色いいな!」、なんてほんわかした商談をイメージしていたが、それも平成時代で終わりを告げたようだ。なんとも味気ないなと思いながらも、まずはボディカラーを決定する。国内のGRカローラは7割程度が渋いシルバーカラーの「プレシャスメタル」らしい。抑揚あるデザインが映える「エモーショナルレッドⅡ」に惹かれつつ、最終的に「プラチナホワイトパールマイカ」(33,000円)に落ち着いた。

GRカローラ RZボディカラー。(スーパーホワイトⅡ、プラチナホワイトパールマイカ、プレシャスメタル、プレシャスブラックパール、エモーショナルレッドⅡ)手前はシアンメタリックで限定50台!

第一話でのとおり、最新の運転支援技術との組み合わせにも注目していたので、オート電動格納式リモコンドアミラー(ブラインドスポットモニター付)、ブラインドスポットモニター+安心降車アシスト、リヤクロストラフィックアラート+クリアランスソナー&バックソナー、カラーヘッドアップディスプレイのセットオプション(117,000円)を選択した。

さらに冬場はスキーに出向くので、ステアリングヒーターとシートヒーターのセットオプション(27,500円)と、同様の理由から寒冷地仕様とLEDリヤフォグランプのセットオプション(22,500円)も選んだ。12Vバッテリーの容量アップ、強化型ワイパー、ウインドシールドデアイサー、フロントワイパークランク、リヤヒーターダクトなどが寒冷地仕様の主な内容だ。

GRカローラには8インチ画面の「コネクティッドナビ対応ディスプレイオーディオ」が標準で装備されるが、より大画面にしたかったこと、車載DCMの通信途切れ時もナビ機能を使いたかったことから、「コネクティッドナビ対応ディスプレイオーディオPlus」にグレードアップ。191,400円とかなり値が張るが、ドライブレコーダー(前方)+バックガイドモニター(録画機能付)、ETC2.0ユニット(VICS機能付)のセットオプションとあり個人的には納得できた。

興味津々だったのが、そのセットオプションに含まれる車載カメラを利用した前後のドライブレコーダーだ。後方はバッグガイドカメラに録画機能を追加したシステムなので厳密にはドライブレコーダーではないが、すでに搭載されている光学式カメラの映像にどれだけの実用性があるのかを検証する機会と捉えていた。

さらにもうひとつの興味対象である「T-Connect」の説明については、販売員さんから伺うよりもトヨタのWebサイトにある画面や表組み、動画など通じて情報を収集したほうが確実だった。たしかに、高度化が進むデジタル技術の説明を口頭+紙カタログで行なうのは難しい。タブレット画面を通じ、時に動画を交えながらの商談は新技術を理解するのに役立つことがわかった。

ところでToyota Safety Sense搭載車では、走行中の各システム作動状況のほか、各センサーの取得データ、画像データ(前・後方カメラの画像)、位置情報を車両に記憶している。これらの情報はトヨタのデータセンターにアップリンクされ、事故解析や故障診断、自動運転技術や先進安全技術、さらには地図関連技術を昇華させる研究開発に活用されている。

具体的には、迅速な消防活動への協力(2022年12月~2024年8月)、スマートフォンの位置情報と連携させた自転車や原付バイク、さらには四輪車との出会い頭事故の抑制(2023年2月)、MaaS(Mobility as a Service/サービスとしての移動体)の自動運転技術開発への転用(2023年10月~2025年2月)などだ。

気になるのが個人情報保護の観点だが、そこは万全のようだ。取得した車外画像データは、映り込んだ人や車のナンバープレートなど、映り込んでしまう対象物に対して個別のIDやタグ付けなどはせず、個別の人や車を検索することができないよう状態で保存しているとのこと。また、映り込んだ人を個人データとして取り扱わないなど、各方面に渡って細かく明文化されている。

得られた情報は社会貢献だけでなく、自車が搭載するToyota Safety Senseのソフトウェアアップデート(SUD)にも活用される。たとえばGRカローラ(2022年12月~2023年7月生産車)のSUDでは、アクセルペダル踏み間違時のサポートに「壁」が加わり、衝突被害軽減ブレーキのリスク推定精度も向上、さらにカーブや夜間など複雑な交通環境にも対応できるようになった。

祝・納車! 販売店の皆さんと(右端が筆者)

転売ヤー対策の「GRカローラ誓約書」にサイン

契約の最後に転売対策について担当者から告げられた。アルファードやベルファイア、ランドクルーザーなど販売店から購入しにくい車種の新古車、それも走行距離が100kmに満たない個体が中古車販売サイトなどで見受けられる。所有権を持つ人物が個人財産である車両を買い取り店に出すなどの行為は合法だが、いわゆる輸出や転売を目的とした購入を販売店では承諾していない。

今回、GRカローラを購入する際、「GRカローラ誓約書」なる書類にサインした。書面には、輸出および最終需要者が確定していない転売を行なわないことなど5つの項目があったが、期間が明記されているわけでもなく、いずれも個人または法人での登録も可能と記されている。つまり、はなから転売目的でなければ契約内容はまったく問題ないものだった。

欲しくても買えない、だから高値で取引が行なわれる……。自由経済では当たり前の事象であるが、人気車種が持つ楽しさやワクワクを得るのではなく、差益だけに目を付けた心ない人がいることも事実だ。

需要と供給のバランスが整えば転売の数も減るだろうが、ヤリスにしてもカローラにしても、GRブランドは純粋に走ることを楽しみ、人生を豊かにしていくために生まれたクルマたちだ。世界中のクルマ好きが抱く夢をぶち壊すような行為がなくなることを切に望みたい。

「皆さんに楽しんで頂けるクルマを世に出すことができました。でも、我々は満足していません。この先も鍛えることで進化を続けていきます」と語るのはGRカローラの開発責任者でありチーフエンジニアである坂本尚之さん(トヨタ自動車GR車両開発部)だ。

坂本さんは続けて、「クルマ好きのお客様にもっとGRを知って頂くために、販売現場の皆さんにもクルマの特性を体感して頂くなど連携を深めて、よりお客様の心を惹き付けていきたいです!」とも話す。ところで、筆者の実家で最初に手に入れた新車が白い2代目カローラだった。1974年の出来事だ。それから50年後の2024年、GRバッジを付けた白いカローラが自身の愛車になった。これも何かの縁だと捉え、一日でも長く、GRカローラとの時間を過ごしていきたい。

2代目カローラ 2ドアSL(これはトヨタの広報写真だ)。当時の価格は56万4000円だった。

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