尚弥は標的フルトンをKOできる!元2階級世界王者が断言「支配的強さ見せつけるだろう」
プロボクシング元2階級制覇王者で米スポーツ専門局ESPN解説者のティモシー・ブラッドリー氏(39=米国)が、前4団体統一世界バンタム級王者・井上尚弥(29=大橋)のスーパーバンタム級挑戦を分析した。現時点でもフェザー級まで敵なしと指摘し、WBC&WBO統一スーパーバンタム級王者スティーブン・フルトン(28=米国)と対戦すればKOすると断言した。(インタビュー・杉浦大介通信員)
――井上尚弥がスーパーバンタム級への昇級を発表した。
「賢明な判断だ。井上は新階級でも支配的な強さを見せつけるだろう。バンタム級、スーパーバンタム級、そしてフェザー級のどこを見渡しても、現時点で井上に対抗できる選手は見当たらない。(バンタム級4団体王座を統一した昨年12月の)ポール・バトラー戦は大人と子供の戦いだった。私の人生を通じて、あれほど容易な王座統一戦を見たのは初めてだった。井上はそれほど凄い選手だということだ」
――井上の強さはどこにあるのか。
「パンチングパワーは見事だし、素晴らしいのはそのパワーがスキルに裏打ちされていることだ。パワーだけでなく、アングルを変えられるし、カウンターも打てる。コンディショニングに秀でていて、リングIQも備えている。バンタム級でできることは全てやった井上が、新しい階級に上がったことをうれしく思う。ただ、繰り返すが、スーパーバンタム級、フェザー級の選手でも井上と渡り合えるとは思わない。2つの階級で4団体統一したのは、今のところ女子のクラレッサ・シールズ(スーパーウエルター級、ミドル級)だけ。井上が男子でそれを成し遂げる史上初の選手になるかもしれない」
――あなたも階級を上げた経験があるが、井上の上の階級での適応時に鍵になると思うことは。
「上半身ではなく、足の体重を増やすことだ。階級を上げたボクサーは、より大きな相手と対戦する対策として、耐久力を増すために体を大きくしなければいけないと考えがちだ。井上は軽量級の選手だが、筋肉を増やしたいなら足につけること。ウエートトレーニングなどで上半身を大きくして、ムーブメントの妨げにしてはいけない。ウエートトレーニングをやるなら、ボクシングの動きへの直結を留意すること。足に筋肉をつければ、パワーは保てるし、相手のパンチを受けた際の耐久力も強化される。あとは首をしっかりと鍛えておくことだ。それさえできれば、昇級は問題ないだろう」
――井上に弱点と言える要素はないのか。
「実は数年前まではディフェンスが井上の欠点になりかねないと思ったが、今では向上したように思う。彼自身もそれが分かっていて、強化したのが見てとれる。井上の能力は無限大だよ。私はまだ彼は全盛期に達していないと思っている。私たちはまだベストの井上を見ていない。そう信じているし、近い将来にさらに凄い強さを見せてくれるんじゃないかと思っている」
――スーパーバンタム級にもスティーブン・フルトン、(WBA&IBF統一王者の)ムロジョン・アフマダリエフといった強い王者がいるが、井上が誰と戦うのを見たいか。
「誰が相手でも問題ではないよ。フルトンは井上とは戦わないんじゃないかと思っている。もしも対戦したら、井上がフルトンをストップするだろう。私はもう映像を見てその試合を研究したんだ。フルトンはインサイドでは最高級の選手ではない。接近しても戦えるが、その距離では快適ではない。あくまでアウトサイドが中心の選手であり、(元WBA&WBC統一世界スーパーバンタム級王者)ブランドン・フィゲロアがプレッシャーをかけ、距離を詰めて善戦できたのはそのためだ。(21年11月の)フィゲロア戦でのフルトンはクリンチを多用して相手を食い止めていた。井上戦ではその戦い方はできない。井上は距離の取り方、リングの使い方がよりうまく、クリンチをさせないようにするだろう。しかも井上はよりパワーがあり、中間距離でのパンチ力も飛び抜けている。井上のパンチが当たった時、他の選手とは違う音がする。爆発音、銃撃音みたいな音がするんだ。彼にはそれだけのパワーがあり、本当に才能に恵まれたボクサーだ。だから井上がフルトンに勝つと思うし、さっきも言った通り、フェザー級までの誰も彼には太刀打ちできない」
――繰り返すが、接戦にもならず、井上がフルトンを圧倒すると考えているのか。
「井上がKO勝ちするよ。フルトンもスキルは備えているし、サイズとリーチのアドバンテージがある。だから自分の距離を保とうとするだろうが、井上のシャープさ、クイックな動き、身体のバランスの良さ、常に適切な位置に身を置ける能力にフルトンは対処し切れないだろう。井上がパワーパンチを決め、クリンチも許さず、最後にはKOしてしまうはずだ」
◇ティモシー・ブラッドリー 1983年8月29日生まれ、米カリフォルニア州出身の39歳。04年8月プロデビュー。スーパーライト級でWBC、WBO王座の統一に2度成功。12年6月、マニー・パッキャオ(フィリピン)に判定勝ちでWBOウエルター級王座を獲得し、2階級制覇。14年4月の再戦は判定負けでプロ33戦目の初黒星。WBO王座を再獲得後、16年4月のパッキャオとの第3戦に敗れて引退。37戦33勝(13KO)2敗1分け1無効試合。今年の国際ボクシング殿堂入りが決まっている。
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