猪木さん、スポーツを通じた国際平和 独自外交で切り開いた道
闘魂百景(中)政治家編
アントニオ猪木さんを50年撮り続けたスポニチOBでフリーカメラマンの原悦生氏(66)が撮りためた膨大なショットの中から珠玉の“闘魂”を追悼企画として本紙に掲載する「闘魂百景」。第2回は政治家としての姿を振り返る。
プロレスラー出身で初めて国会議員となった猪木さん。政治家としての大きな業績は独自外交だった。1990年3月にはキューバの日本大使館を訪れ、フィデル・カストロ国家評議会議長(当時)と会食。猪木さんが、まるで古くからの友人を相手にするようにカストロ氏にお酌する姿は話題になった。
「猪木さんはとにかく相手の懐に飛び込むのが上手な人でした。この時、2人が会ったのは2度目。ここまで和気あいあいとできるのかと驚きました」
2人の初対面は、猪木さんが参院選に初当選した89年の暮れ。ソ連に行く前にキューバに寄った時だ。そこで8歳で急死した娘のことなど、身の上話までしたことで意気投合し、翌年の食事会につながったという。
「実は食事の前に2人で1時間ぐらいお茶もしていたんです。大使が通訳をしていましたが、猪木さんは(公用語の)スペイン語を聞き取れるので会話のテンポが良い。ボクシングのことやカリブ海の沈没船の引き揚げ計画などいろんな話をしていました」
90年12月にはイラクで人質となった日本人の解放に尽力した。
「猪木さんは交渉相手に“人質を返せ”とは言わず、人質の奥さんをイラクに連れていった。“奥さんを連れていけば一緒に帰国させてくれるだろう”と。狙い通りになったことに奥さんたちが喜んで、解放された旦那さんたちより前に出られて猪木さんと“ダァーッ”をやったんです」
◇原 悦生(はら・えっせい)1955年(昭30)12月9日生まれ、茨城県出身の66歳。高校1年の時から猪木さんを追って写真を撮り続け、早大卒業後、80年にスポニチに入社。86年に退社しフリーに。今年3月、写真本「猪木」を出版した。
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