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元日本2階級制覇王者・黒田雅之が引退表明 井上尚弥とのスパーで左肘の腱を断裂 介護の道へ

[ 2022年6月16日 19:22 ]

引退会見を開いた黒田雅之
Photo By スポニチ

 ボクシングの元日本ライトフライ、フライ級の2階級制覇王者・黒田雅之(35=川崎新田)が16日、都内で会見を開き、引退を表明した。20年10月に現バンタム級世界3団体統一王者・井上尚弥(大橋)とのスパーリングで左肘の腱を断裂。手術を受けて今年1月に再起戦を行った(判定負け)ものの、ジャブを打つ時に痛むなど違和感が消えなかったという。「無理すれば続けられたが、ごまかしてやっていてはボクシングという競技に失礼にあたる。これ以上続けたらボクシングという夢にしがみつくのではなく、ボクシングに縛られてしまうと思い、辞めるなら今しかないと考えた」と説明した。

 黒田は05年5月プロデビュー。06年度全日本ライトフライ級新人王に輝き、11年5月に日本同級王座を獲得して4度防衛した。13年2月にWBA世界フライ級王者フアンカルロス・レベコ(アルゼンチン)に挑戦して判定負け。17年には日本フライ級王座を獲得して2階級制覇に成功したが、19年5月の2度目の世界挑戦でもIBF世界フライ級王者モルティ・ムザラネ(南アフリカ)に判定負けしていた。

 12年7月には井上尚弥のプロテストの相手も務めていた。20年10月は弟・井上拓真(大橋)とのスパーリングをした際に肘の不調を覚え、約1週間空けて「違和感はあるがいけるだろう」と臨んだ井上尚弥とのスパーで左ボディーフックを打った際に負傷。「しっかり(肘を)固定して打てば腱は痛まなかったはず。速いテンポで慌てて打つ感じになってしまった」と説明し、手術した医師からは「スポーツ選手ががその腱を着るのは相当珍しい。学会で発表したい」と言われたと明かした。

 2年前から川崎新田ジムが推進する「川崎市働き方改革・生産性向上推進事業」をきっかけに、訪問介護事業の「SOERUTE」(川崎市)に就職。一日6時間の勤務後に練習する生活を送っていたが、3月の引退決意後はフルタイムで勤務し、高齢者向けのボクシングエクササイズなどを担当しているという。今後も同社で勤務を続け、将来はスポーツを通じて人生を豊かにする場を提供していく夢を口にし、「ボクシングは僕の人生に彩りを与えてくれた。振り返ると面白い人生だった。スポーツが楽しい人生の一部になる、そういう人を一人でも多く増やしていきたい」と語った。

 井上尚弥のプロテストの相手やスパーリング相手をたくさん務めたことについては「光栄。今やPFP(パウンド・フォー・パウンド)1位、とんでもない選手とやっていたんだと思うし、同じ時代に現役でいられたことは誇り」と話したが、「現役中は絶対に言いたくないと思っていた。今の選手たちはSNSで仲が良いが、若干古い人間なのか、自分以外はライバルというか、自分が一番と思ってやるもの」と持論を展開。この日初めて、井上尚弥のツイッターをフォローしたことを明かした。「これからの人生、井上選手とスパーしたとか日本王者だったことを“そんなこともあったね”と言われるぐらい、今後の自分を高めていきたい」とセカンドキャリアの充実を誓った。

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2022年6月16日のニュース