イ・ボミが日本で愛された2つの理由 マスターズGCで日本ツアー引退

[ 2023年10月20日 16:45 ]

<マスターズGCレディース第2日>最終ホールをパーとしたイ・ボミはバンザイ(撮影・井垣 忠夫)
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 【福永稔彦のアンプレアブル】イ・ボミはなぜこんなに日本で愛されたのか。二つの理由があると思う。一つ目は「笑顔」。韓国メディアが名付けた「スマイル・キャンディ」のニックネームの通りどんな時も笑みを絶やさない。

 17年を最後に優勝から遠ざかって以降は、早朝スタートも多くなった。観客もまばらなホールで、ショットを曲げて沈んだ表情を浮かべることもあった。ただファンに声を掛けられたり、顔見知りの記者を見かければ必ず顔を綻ばせた。

 イ・ボミは「お母さんから“笑顔でいれば良いことがあるよ”と言われるんです。ショットが悪い時、いい流れじゃない時は笑顔がしんどいこともあった。クラブを投げたいと思ったこともある。でも今は反省しています」とはにかむ。苦境にあっても周囲を喜ばせるために笑顔を作り、その健気な姿が人を引きつけてきたのだ。

 もう一つの理由は「日本語」。来日2年間は苦労したが、所属契約を結んだ延田グループの延田久弐生元会長に「間違えてもいいから自信を持って喋ればいいよ」と背中を押され、積極的に話すようになった。

 メジャー初優勝した13年日本女子プロでは、鈴木美重子・日本女子プロゴルフ協会元専務理事に「一人で会見してみたら」と通訳なしで優勝会見を行うよう促された。最初は「できません」と拒んでいたが、何とかやりきり「あれでメディアとの距離が一気に縮まった」(鈴木氏)。食事会を開催するなど、ファンとも日本語で直接対話することで親近感を持たれるようになり、外国人にもかかわらず日本ツアーの看板選手になった。

 大会前の会見で、日本のファンへの思いを尋ねられたイ・ボミは「ここまで愛されると思ってなかった」と答えた。日本人なら気恥ずかしくなるようなストレートな表現もイ・ボミが口にすると、愛らしく聞こえる。プレーはもちろん、立ち居振る舞いも、コメントも魅力的なゴルファーが見られなくなるのは本当に寂しい。(スポーツ部専門委員)

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