ブックメーカーのオッズを覆した日本 倒したのは米国が“土台”のフィンランド

[ 2023年8月28日 08:28 ]

フィンランド戦に勝ったあと河村を抱きしめる渡辺(AP)
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 【高柳昌弥のスポーツ・イン・USA】フィンランドといっても“米国色”の強い代表チームでもある。アリゾナ大から2017年のNBAドラフトで全体7番目に指名されているラウリ・マーカネン(26=213センチ)は昨季ジャズで25・6得点、8・6リバウンドをマーク。球宴に初選出されたほか、最も進歩した選手に与えられるMIT(MOST・IMPROVED・PLAYER)も受賞している。

 日本戦の先発メンバーにはフォワードのオリビエ・カモア(23=203センチ)がいたが、彼は全米大学バスケの強豪校がひしめくSECに所属しているテネシー大で4年間の競技生活を送り、計112試合(先発58試合)に出場していた。昨季は平均10・8得点、5・0リバウンドを記録。1月28日のテキサス大戦では自己最多の27得点を稼いでいたカレッジ・バスケ界のトッププレーヤーだった。

 同じく先発のミカエル・ヤントゥネン(23=204センチ)もパック12に所属するユタ大でプレー。昨季まではイタリア・リーグでプレーしているが、NBAのサマーリーグにウォリアーズの一員として出場した経歴がある。

 米国でのプレー経験はないが、先発ガードのサス・サリン(32=191センチ)は2022年の欧州チャンピオンズ・リーグを制したテネリフェ(スペイン)の優勝メンバー。過去の実績を評価するのは当然で、日本戦の前に各ブックメーカーが提示したオッズは、日本の4・25~6・75倍に対してフィンランドは1・12~1・21倍とまさに“鉄板系”だった。

 日本は世界選手権を含めて欧州のチームに対して通算11戦目で初勝利。第3Q終了時点で10点差をつけられたときには、個人的にはもう日本が勝てるとは思わなかったが、河村勇輝(22)や富永啓生(22)といった若手のベンチ勢が奮起。第4Qを35―15として貴重な1勝をもぎとった。

 フィールドゴール(FG)成功率ではフィンランドの45・7%に対して日本は51・7%。サイズ的な問題で不利と見られていたチーム・リバウンド数でも36―35、ペイント内の得点でも34―34と互角に戦ったことは、これまでの“対欧州”ではほとんど見られなかった一面だ。なによりベンチスコアでは61―21と圧倒。“チーム一丸”とはこのことを言うのだなとつくづく感じる一戦だった。

 さて喜ぶのはこのあたりまでにしよう。1次リーグ最終戦の相手となるオーストラリアはドイツに82―85で敗れたとは言え、NBAに所属する選手が核となっているチーム。ブックメーカーの総合比較サイト「オッズチェッカー」の優勝オッズは全体4番目の12倍だ。

 サンダーのジョシュ・ギディー(20=203センチ)はNBA2シーズンでトリプルダブルをすでに8回達成しているし、今季ネッツからホークスに移籍したガードのパティ・ミルズ(35)の3点シュート成功率は通算で38・9%。トレイルブレイザーズのマティス・サイブル(26=195センチ)は76ers時代からディフェンスのスペシャリストとしての評価が高く、バックスのジョー・イングルス(35=206センチ)はジャズ時代からオールラウンダーとして活躍してきた。

 ドイツに負けて1勝1敗と追い込まれたことでオーストラリアは日本に対して全力で牙をむいてくるだろう。だからこそ日本は第4Qだけでなく、全クオーターをチーム一丸となってスコアをきちんと整えていくことが必要。あえてフィンランド戦以上のものを求めたいと思うが、できないことはないだろう。

 なんと言ってもここは日本だ。だからオーストラリアが持っていないホーム・アドバンテージを最大限に生かして戦ってほしい。英語圏のメディアに「なんという素晴らしいパフォーマンスだ。日本が歴史を作った」と言わしめたフィンランド戦。夏の終わりの“続編”をぜひ期待したい。
 
 ◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市出身。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。NFLスーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会には7年連続で出場。還暦だった2018年の東京マラソンは5時間35分で完走。

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